(写真/AFLO)

ソンジュン役を演じたパク・ソジュン(写真/AFLO)

 また、2015年放送当時も今も韓国は就職難。「夢は正社員」と話すへジンに共感する人も多かった。家柄や学閥に加え、見た目も「競争力」と評価される韓国で、貧乏でどんなにファッションがダサくても、肌がきれいでなくても、思いやりがあって前向きに頑張る人は必ず報われる、ありのままの自分を愛してくれる人がいるというストーリーが共感(韓国では「代理満足」と言う)を呼び、特に30~40代の女性に熱烈に支持された。

 さらに、韓国ドラマでは主人公の女性と三角関係になる相手役は大体意外と純情派のツンデレ御曹司イケメンと、全てを包み込む優しいイケメンのどちらかなのだが、本作でチェ・シウォンが演じたキム・シニョクは、顔を見ただけで笑ってしまうほどコミカルな存在。いたずら好きだが人を不愉快にさせないムードメーカーで、いつもへジンの味方になってくれる頼もしさがある一方で、ミステリアスな一面もあるという複雑さも持ち合わせた「図々しい変わり者イケメン」という見慣れない役どころで話題を呼んだ。

 物語の後半では、韓国で「さつまいもシーン(水無しでさつまいもを食べた時のように胸が苦しい、すっきりしない)」と言われた、へジンが自分に自信が無さすぎてソンジュンに思いを打ち明けられないもどかしい場面もある。だが、その分ソンジュンの一途な面が際立ち、ソンジュン役を演じたパク・ソジュンの声と表情にファンになってしまう人も続出。当時デビュー4年目だったパク・ソジュンが、ドラマ放送後のインタビューで「人気を肌で感じている」と恥ずかしそうに語っていたのを覚えている。

 就職難や見た目重視の社会を生きる女性の苦労や、女性同士の友情と絆、ありのままの姿が愛され成長していくヒロイン、どんな状況でも自分の人生の主人公は自分だというドラマのメッセージは、今見直しても共感できる。日本版のヒロイン像にもその要素が多く反映されており、韓国の原作ファンにどう受け入れられるのか楽しみである。

【趙章恩】
ジャーナリスト。KDDI総合研究所特別研究員。東京大学大学院学際情報学修士(社会情報学)、東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。韓国・アジアのIT・メディア事情を日本と比較しながら分かりやすく解説している。趣味はドラマ視聴とロケ地めぐり。

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