『ギルティ』では小悪魔な「攻め」のラブシーンを披露していたが、『痴情の接吻』のラブシーンは、恋人にたっぷり愛される「受け」の演技が光っていると言えよう。

 映画ライターの磯部正和氏は、女優・中村ゆりかの「ひとりの登場人物の中での演じ分け」に着目する。

「中村ゆりかさんの大きな魅力は、ひとりの登場人物として見せる顔のバリエーションの多さではないでしょうか。作品によってガラリと違う人物を演じる俳優さんは数多くいます。中村さんもそのひとりだと思いますが、何よりもすごいのが、『同一人物なのに、全く別人に見せるようなキャラクター造形』です。怪演が話題になった『ギルティ』でも、前半は人懐っこい妹キャラを演じていたかと思えば、ある日を境に豹変し、どす黒い感情をまといホラーとも言えるような悪女を演じました。

 物語を作る上で大切なのが、登場人物の変化をしっかりと捉えること。中村さんはその変化のキレが小気味良いので引き込まれます。特に男女の感情が集約されるようなラブシーンでは、ビジュアル以上に内面的にも魅せるところが、よりグッとくる要因になっているような気がします」

 中村のラブシーンは、ただセクシーなだけではなく、登場人物の内面を感じさせるからこそ引き込まれる。それを可能にしているのは、彼女の確かな演技力だ。

 10月9日からスタートする新ドラマ『言霊荘』(テレビ朝日系)にも出演し、オファーの絶えない中村。多面的な演技で、本格ブレイクの日も近そうだ。

◆取材・文/原田イチボ(HEW)

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