ホームレス女性が夜を過ごしたというバス停のベンチは驚くほど狭く、小さかった

バス停のベンチは驚くほど幅が狭く、ゆっくり座ることができなかった

 筆者は彼女と同様、明け方までいることにした。やむを得ない事情だった彼女と違い、筆者はバス停にずっと腰掛けるわけにはいかないので周辺を歩き続けることにする。さまざまな事情で朝まで外にいた経験はあるが、この年になると昔のようにはいかない。これが11月末の冬となるとどれだけ厳しいか。まして還暦過ぎた女性、手持ちは8円しかなかった。それでも彼女はこのベンチに腰掛けていた。最終バスが行ったあと、始発が来るまでの時間を利用して休んでいたのだろうが、眠れたかどうかはわからない。こんな腰掛けでも眠りにつけるほどに疲弊していたのかもしれない。

ホームレスになったばかりの方というのは難しい

「名前を出さない条件ならお話できます」

 ホームレスの声掛けをしている方に話を聞いた。都心ではさまざまな支援団体が声掛けや炊き出し、社会福祉援助を実践している。この方のグループは少人数で声掛けをしている。

「見回りと声掛けが基本です。大きな団体では自前のシェルターに入れて生活保護の申請などしていますが、問題も多いです」

 いわゆる「囲い屋」と呼ばれるホームレスを使って生活保護費を搾取する悪徳団体のことを話してくれた。もっとも、お小遣いをもらって暮らせればいいというホームレスもいるため、個々の幸せを考えるとすべて悪かは難しい、ということも正直に話してくれた。

「言い訳のようですが、幡ヶ谷となるとわかりませんでした。渋谷の支援関係者も難しいでしょう。ちょうど盲点というか、新宿駅や渋谷駅の目のつくところで生活されている方ならともかく、それにホームレスになったばかりの方というのは難しいんです」

 すでにホームレスとして把握済みの「常連」ならともかく、ホームレスになったばかりの人を見つけるのは本人申告でもなければ難しい。語弊あるかもしれないが身なりもまだ綺麗だろう。かといって身なりが汚れているからホームレスとも限らない。

「とくに女性のホームレスの方は男性に比べると少ない上に、精神的なご病気という方もいらっしゃいます。そうしたご病気でなければ身なりは普通、お金があるうちはネットカフェやサウナを転々とする方もいて、そうした方がホームレスか、困っているのかどうかは本当に難しいんです」

 一般的なイメージと違い都会のホームレスはそれなりに身綺麗な方もいる。でなければ店に入れなくなるし、日常生活に支障が出る。「家はないが働いてるし困ってないぞ」という人もいる。本当に事情はそれぞれだ。

「ターミナル駅とか目立つ場所に連日いらっしゃれば声掛けも有効なのですが、今回のようなケースは本当に難しいです」

 力不足と付け加えて悔しい気持ちを語ってくれた。このグループではないが事件当時「お前らが見つけないから」「どうして保護してあげられなかったんだ」と匿名のメールを送りつけられた団体もある。こうしたかりそめの正義や善意もまた、悪に転じる。

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