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自立と恥じらいを体現し、30年続いたブルマ文化の功罪

山本雄二先生にはZoomで話を伺った

山本雄二先生にはZoomで話を伺った

──中体連は、戦前のエリート主義・精神主義・勝利至上主義を排し、スポーツを民主主義の学校として広げることを旨としており、具体的には、中学生以下の全国大会など大きな大会の開催を阻止するための組織だった。だからお金もほとんどかからない。それが東京オリンピックの惨敗によって、青少年世代からのスポーツ強化が叫ばれるようになり、大会が開かれるようになっていく……。ブルマ普及の裏にあったのは、一見、ブルマとは何の関係もなさそうな事情で、社会の複雑さを教えられます。

山本:「中体連」は文部省の意向に沿って、教育関係団体として全国大会の主催者に名を連ねるようになるのですが、いつの世も、発言権を持つには相応の負担が必要です。しかし、中体連というのは、中学校の先生たちの集まりですから、大きな資金集めをする知恵も術を持っていない。でも、頭のいい人っているんですね。中体連に食い込んで商売をやっていたすばらしく商才に長けた人物が、あるアイディアを授けるんです。

いったん導入されると、道徳性・精神性を帯びていく不思議

──そのアイディアが、全国の学校に、体操服を切り替えさせることでした。それまで着用していた体操着を、男女ともに、まったく新しいものへと刷新し、売り上げに応じて寄付をしてもらうというやり方です。そのとき採用された女子の体操着が「ブルマ」でした。

山本:最初はそんなことがうまくいくのだろうかと、中体連もメーカーも半信半疑で、苦労も多かったようですが、結果的にうまくいったんです。約3年の間に、ほぼ全国の学校でブルマが採用されるようになりました。

──学校の先生には、女子に「ブルマ」をはかせることに戸惑いはなかったのでしょうか?

山本:現場の先生たちが動きやすくて伸縮性がある体操着を求めていたこともありますし、大きかったのが、1964年の東京オリンピックの影響です。あのオリンピックは、多くの日本人が初めてテレビ映像で見たオリンピックになりました。日本人を熱狂させたバレーボール競技で、ソ連の選手はブルマをはいていましたし、それ以上に日本人の価値観をゆさぶったのが、海外の女子体操選手だったと思います。ぴったりしたレオタードに身をつつんで溌溂と演技する体操選手に、こういう強さや美しさがあるのかと、多くの日本人が衝撃を受けた。女性の身体は「家」制度存続の手段としてではなく、それ自体が健康と美の象徴として積極的に肯定されるものだと、日本人が知ったのです。こうしたことが、学校にブルマを受け入れる土壌を用意したと考えられます。

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