新型コロナウイルスワクチンの子供への接種が始まる自治体に、電話で抗議するよう呼び掛けるフェイスブック上のグループ(時事通信フォト)

新型コロナウイルスワクチンの子供への接種が始まる自治体に、電話で抗議するよう呼び掛けるフェイスブック上のグループ(時事通信フォト)

「反ワクチンの人たちが過激なことを言っているという話題が世間話にのぼるとき、あれはある種の社会現象で、いつの時代にも一定数いるものだ、なんて笑う人もいます。確かにそうかもしれませんが、一緒に笑ってやり過ごせなくなりました。その家族はとても辛い思いをしているし、反ワクチンが馬鹿馬鹿しい言説にしか見えなくても、みんなそれが社会のためだと思い、本気でやっている。だから、それは違うんだと訴える家族との溝は深まるばかり。誰も悪くはないのに、どうして、こんなことになってしまったのか。普通の家庭だったんです。本当に突然、災害みたいです」

 SNS上には、ワクチンの危険性を必要以上に煽り立てると同時に、コロナに効くとうたう健康食品を売り続けている人々がいる。ワクチンの危険性を世界的な陰謀論に強引に結びつけ、科学的根拠に乏しい妄想に近い内容の書籍を売り、講演会を開催し、莫大な収入を得ている人もいる。こうした存在が全ての原因とは言わないが、副島さんの妹がSNS上で購読登録しているアカウントの中には、この「莫大な収入を得ている人たち」の著作、講演会に関する情報を広めている人がたくさんいたという。

 確かに、彼らが主張していることには、荒唐無稽としか受け取れないことも多く含まれている。それは馬鹿馬鹿しいことなので、信じている人たちなど放っておけというのも一つの考え方だ。確かに、彼らの矛盾を指摘して、議論するのは時間の無駄だと思うかもしれない。だが、話が通じない人だと簡単に他人にレッテルを貼り、話し合いするのが面倒だと無視するのでは、私たちが求める平穏な日常を取り戻せない。

 筆者の主観ではあるが、こうした現象は、ワクチンだけでなく、政治や教育の現場でも散見されるようになったのではないか。自身と意見が合わない人と話し合うこともせず、わかり合おうともせず、いきなりレッテル貼りから入り、罵り、飽きると無視しあい、互い存在そのものを否定する。ワクチンをめぐる騒動で言えば、反ワクチン的な言説を信じる人だけでなく、反ワクチン的な言説を嘲笑する人たちもまた、両者の関係の悪化に拍車をかけているはずなのだが「自分は正しい」と頑な態度を崩すことはない。

「分断」はコロナ禍によってより深刻なものになり、大きな対立を生み出したのは現実だろう。だが、分断をそのままにして、社会は本当に「日常」を取り戻すことができるのか。何か大きな「問題」を社会全体が見て見ぬふりをしたままで、それでも「日常が戻った」と言えるのか。

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