新設された経済安全保障担当大臣の小林 鷹之(時事通信フォト)

新設された経済安全保障担当大臣の小林鷹之氏(時事通信フォト)

 同じくB氏のケースも深刻だ。

 レポートによれば、南京航空航天大学の研究者だったB氏は、1990年代に来日し東北大学に長く籍を置いていた。主に機能材料、構造研究、高性能高圧機能デバイス等についての研究を行ない、1億円以上の科研費を取得した。B氏は文科省や経産省からも3億円以上の多額の研究助成金を受けていたことを自ら明かしていたという。

 彼の出身大学である南京航空航天大学も、前述の国防7校のうちの一つである。

 B氏はどのような意図を持って来日したのか。日本で共同研究を行なっていた中国人研究者C氏に取材を申し込んだところ、次のような回答があった。

「B氏が所属していた大学は、軍との関係がかなり強いと思います。彼が中国南京航空航天大学に戻ってから連絡を取ったことはなかったと思います。彼が帰国後何を研究しているかも、まったく存じておりません」

 10年以上、日本の大学に籍を置き研究活動に従事したB氏。彼の真意は中国に帰国してから明らかになる。B氏の帰国後の実態について、レポートでは次のように報告をしている。

〈(中国に帰国後の)2008年、B氏(レポートでは実名)が所属するプロジェクトチームが、国防科工委イノベーションチームの称号を獲得した。また、B氏は軍事研究プロジェクトである装備研究プロジェクトの助成を受け研究を行なった〉

 B氏の中国内での研究活動を見ていくとミサイル関連と見られる〈発射体の折りたたみ変形構造の設計及び実証技術の開発〉、戦闘機関連と見られる〈セミアクティブ制御とエネルギー回収に基づく典型的な航空機構造の振動制御技術の研究及び実証〉など、軍事的な項目が並ぶ。

 現在、中国政府は「軍民融合」を掲げ〝軍備増強〟を国家事業として進めている。その中核を担っているのが「国防7校」であり、そこに所属する研究者たちなのである。

「同姓同名の人物が在籍」

 では軍事研究者と見られる外国人が在籍していたというリスクに対して大学側はどう考えるのか。九州大学はこう答えた。

「お問い合わせいただいたA氏と同一人物かどうかは分かりかねますが、同姓同名の人物が2012年10月から2015年3月まで九州大学応用力学研究所の研究員として九州大学に在籍していることが確認できました。本学を離れて以降の詳細な経歴は確認できておりません。(中国の軍事研究者などについて)現在、大学として受け入れについて確認・管理を行なうシステムを運用しておりますが、今年から国の方で研究インテグリティ(健全性・公正性)の確保に係る対応が全般的に議論・検討されていると聞いており、本学としても国の方針を踏まえつつ、改めて大学としての考え方を整理してまいりたいと考えます」(広報室)

 東北大学からは期日までに回答がなかった。

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