プロと秀才の化学反応
そして躍進を決定づける最後のピースが、「元プロ野球選手」の指導者の加入だった。
2017年からコーチとして指導を開始し、今年11月に新たに監督に就任した近田怜王氏(31)は、2008年夏に報徳学園のエースとして甲子園のベスト8を達成し、その後ソフトバンクでプレーした野球エリートだ。
近田監督は2017年に初めて京大の試合を見た時、これまで過ごしたチームとのギャップを、いい意味で感じたという。
「とにかく楽しそうに練習をするんです。僕が見たことのないメニューを各々好き勝手に、かつ真剣にやる。“京大らしさ”を肌で感じました。
僕がやってきたチームと違う環境だからこそ、この環境を大切にしようと思った。技術的な指導をすることはほとんどなくて、僕のプロとしての経験を自分から聞きに来て、それをうまく吸収してくれる。投手起用の采配も三原と共同で行なっているし、練習試合は学生コーチに指揮させたりします。そういう自由な発想は、僕が逆に京大生から学んだところです」(近田監督)
元プロの知見と、それを素早く吸収する選手たちの「地頭の良さ」が、化学反応を起こした。
立命館大学の後藤昇監督は、「近田君が来てから京大投手陣が打ち崩せなくなってきた」と話す。
「今までの京大は、先発投手を叩けば後から出てくる投手のレベルは低かった。最近は“よし、ココだ”という攻めのタイミングで、継投をうまく使われるんです。水口君クラスの投手が後ろにいるというのもイヤ。130キロ前後の先発投手から150キロの水口君にスイッチされたら、なかなか厳しいですよ。しっかりとした対策が必要なチームになった」
京大にはスポーツ推薦制度がないため、高校生からピンポイントの補強はできない。だからこそ、その年いる選手に「何ができるか」で、チームとしての色は毎年変わる。