毎年話題に上がるのはNHK紅白歌合戦の司会者だ。第72回となる今年の紅白では、紅組白組の区別なく、すべて“司会”で統一された。
“白組司会”“紅組司会”と区別されていた前回までの歴史の中で、紅組司会をもっとも多く努めたのが、佐良直美さんだ。
1967(昭和42)年の第18回紅白に『世界は二人のために』で初出場して以来、歌手として13年連続出場したのが佐良さん。紅組司会も黒柳徹子と並ぶ最多5回務めたのち、現在は芸能界を引退して栃木県の那須塩原で暮らしている。
「紅白初出場で歌った『世界は二人のために』って、実は明治のチョコレートのCMソングだったんです。当時のNHKは、いま以上に企業カラーが出る曲に厳しかったので、NHKで歌わせてもらったのはあの紅白が初めてでした。これも、120万枚も売れて新人賞をいただいたお陰です。
実は前年、家で紅白を見ながら『来年はこの中にいるからね』と冗談で言っていたんです。現実になるなんて! 嘘から出たまことって、あるんですね(笑い)」(佐良さん・以下同)
2回目の司会の前には、故・美空ひばりさんを訪ねたという。
「『ぜひ、ひばりさんの曲紹介をさせてほしい』と相談すると、『しっかりやってちょうだい』と。当時ひばりさんの曲紹介を歌手がするのは異例だったのです。ひばりさんからは“ぷっくりちゃん”と呼ばれかわいがっていただきました。
司会の実務面ではクリスマスショーの終わる25日以降、紅組白組の出場歌手のレコードを全部借りて、イントロを聴いて徹夜でコメント作りをしました。ただ、本番では“巻き”が入るので、手のひらに収まるサイズの英単語帳にメモしたコメントを、状況に応じて読むよう工夫しました」
最近の紅白には思うところがある。
「団体さんが増えましたよね? ひとりでじっくり歌う人の曲も聴いていたいので、もっとバランスよく、多様化してほしいですね」
【プロフィール】
佐良直美さん/1945年、東京都生まれ。現在、栃木県那須塩原市で家庭犬のしつけ教室『アニマル ファンスィアーズ クラブ』を主宰。
取材・文/北武司
※女性セブン2022年1月6・13日号