過去には、伊豆諸島の海底火山噴火による死者も発生している。
「1952年に伊豆諸島の青ヶ島の南にある明神礁という海底火山が噴火した際は、調査に向かった海上保安庁の船が巻き込まれ、乗組員31人全員が亡くなりました。爆発によるものか、津波にやられたのか、詳しい状況は判明していませんが、この海底火山が再び噴火する可能性もあります」(同前)
巽氏の調査によれば、伊豆諸島周辺には、「大室海穴」などの隠れ海底火山があることが分かっている。
トンガの海底火山噴火では、海域周辺にあった島が消滅していたことが衛星写真で判明した。日本でも諸島群近辺の海底火山が噴火すれば、島が消える事態になりかねない。
南西諸島周辺にも、巨大な海底火山が並んでいる。2017年、巽氏を中心とする神戸大学海洋底探査センターの研究チームは、海底調査によって、薩摩半島の南約50kmにある「鬼界カルデラ」の海底中央に、直径約10km、高さ約600mの溶岩ドームという溶岩のかたまりがあることを発見した。
「南西諸島には、伊是名海穴や南奄西海丘などの多くの隠れ海底火山が潜んでいます。
その一つである鬼界カルデラは約7300年前の超巨大噴火によってできた陥没構造です。当時は完全な海底火山ではなかったものの、噴火に伴って高さ10~20mの津波が近隣を襲い、大分や高知、三重にまで達したことも明らかになっています。さらに大量に噴出した火山灰によって、南九州の縄文人社会は壊滅したといわれています」(巽氏)
もし南西諸島の海底火山が噴火すれば、火山灰は東京にも飛散することが想定されるという。巽氏が語る。
「日本上空には偏西風が吹いているので、火山灰は東に向かって飛びます。伊豆諸島や小笠原諸島で噴火が起きても火山灰による影響はさほどありませんが、南西諸島の場合、風が少し南から吹けば、九州、四国、関西、関東まで火山灰による被害が広がる可能性があります」