その菅氏は一時期、政治への熱意を失いかけていた。『菅義偉の正体』などの著書があるノンフィクション作家の森功氏が語る。
「菅氏は総理を退陣してしばらくは政治的にも精神的にも苦しい状況にありました。家族から引退を勧められたこともあったようです。しかし、昨年の総選挙では6割の得票率で小選挙区での当選を果たし、選挙区の有権者から支持を得た。それで改めて政治に対するやる気を取り戻したようです。菅氏が陰に陽にバックアップしてきた日本維新の会が大きく議席数を伸ばしたことにも背中を押されたのでしょう」
“岸田に負けたままで終われるか”。菅氏の心に火がついた。総選挙後の昨年末からメディアにも積極的に登場するようになり、活動も再開した。
「すべては菅さんの心次第」
とくに政界で注目されているのが昨年12月22日に行なわれた菅氏の“忘年会”だ。菅氏をはじめ、二階派最高幹部の林幹雄・前幹事長代理、武田良太・前総務相、旧石原派を継いだ森山裕・総務会長代行、そして石破茂・元幹事長が参加した。いずれも岸田首相と距離を置く非主流派の有力者たちだ。
この会合が菅氏の派閥結成と反岸田勢力結集への根回しだったという見方が強い。会合の前、日経新聞のインタビュー(12月21日付)にこう語っていたからだ。
「政策を引っ張りだして『こういうのをやろう』というほうがいい。仲間の緩やかな連携をやりたい。党の部会で発言しなければいけないので、一定のかたまりが必要だ」
自民党内には菅氏を支持する当選5回以下の無派閥議員の会「ガネーシャの会」をはじめ、参院にも菅支持グループがある。菅氏がその気になれば、いつでも20~30人規模の派閥を立ち上げることは可能だ。だが、それだけでは岸田首相に対抗する力は持てない。
「黒シャツ」のニックネームで知られる元産経新聞政治部長で政治ジャーナリストの石橋文登氏が“その先”を語る。
「菅さんには派閥を持たなかったために総理を続けられなかった思いもあったと思う。派閥は選挙の支援もするし、資金協力もする。政治家の教育機関でもある。それがなかったから、グループの仲間から菅原一秀、河井克行の不祥事が出てしまった。そのあたりを菅さんもお考えなのでしょう。