「基本的には、2人のハイポインターがボールをやり取りします。片方がボールを持っていたら、もう片方は次にボールをもらいやすい場所へ移動する。僕はその様子を見て、味方のやりたいことを考えて、ディフェンスをします。自分が走ってボールをもらうよりは、相手を止める動きですね。
ハイポイントの人はスピードでなんとかなるから、ぶつかりに行っても戻ってこられるんですが、ローポインターは、それよりは『相手がここに来るだろう』と予測したり、野生の嗅覚が必要です。水球をやっていたから球技特有の空間把握能力が身についているみたいで、それはけっこうアドバンテージです」
試合では、ついダイナミックに駆け回るハイポインターに目が行きがちだが、ローポインターのサポートも、意味がわかってくると見逃せない。パラリンピックの3位決定戦でも、長谷川選手が相手選手の進路をうまく塞ぎ、得点させなかった。
「僕の場合、ベルトをしていない日常の車いすだと、落車するリスクがあるんです。ちょっとした溝にはまって、車いすから落ちてしまうこともあったり、危ないのでスピードを出せません。でもラグ車にはタイヤが6輪ついていて転びにくいし、ベルトもつけるから、思いっきり漕げてスピードが出せるんです。それが楽しいですね」
ラグ車(ラグビー用の車いす)は、車輪がハの字になっていて角度がついており、直線よりもターンに特化した車いすだ。以前、体験で乗らせてもらったことがあるが、まっすぐ走ることさえできなかった。
「僕は代表のローポインターの中でもだいぶ状態が悪い方なんです。始めた当初は、当時の代表監督にも『趣味程度に続けられたらいいね』って言われていたんですよ。でも、頭を使って動けばここまでできるんだって、自分でもびっくりしています」
華やかなルックスから、一見、アグレッシブなタイプかと思いきや、長谷川選手は冷静で客観的で、武士のような雰囲気も漂わせる。
「試合で負けても泣いたり涙を流さないで次を考えるとか、勝ってもまずは相手を讃えるとか、すぐにガッツポーズして目の前ではしゃがないとか、そういう平常心を保つことにこだわりを持っているんです。
自分がスポーツ観戦しているときに、ラケットを投げるとか、グラウンドにツバを吐くとか、そういう選手があまり好きじゃなくて。柔道のように終わってしっかり礼をするまでが試合です、みたいなのに憧れてるんです。終わって戻るまでは、負けてもその場で絶対崩れたりしない美学というか」
こんなこともあった。長谷川選手ほか車いすユーザーと一緒に水族館へ遊びに行ったとき。周囲の人々の態度があまりに無作法で、私は叫びたくなってしまった。