活発だった保育園児が生気のない小学生に
──1作目、2作目は、保育園が舞台でした。今回なぜ、小中学校を取り上げたのですか?
オオタ:保育園ではつらつとしていた子どもたちが、小学校に上がった途端に生気をなくす例を多く目にしました。個性的で面白い子ほど、小学校ではうまくいっていない。
西郷:いまの小学校教育は、「まわりと同じ」であるように強いることが多いですから。
オオタ:外で元気に飛び跳ねていた子が、小学校で長時間、整列させられるのですから、うまくいくはずがありません。それで、いろいろ探しているうちに「きのくに子どもの村学園(以下、子どもの村学園)」にたどり着きました。ここは、大阪市立大学元教授の堀真一郎さん(78才)が立ち上げた学校法人で、小中一貫校です。和歌山、福井、山梨、福岡、長崎と全国5か所に学校があるのですが、ここにはいわゆる「先生」もいなければ、宿題もない。小1から小6までが、学年の枠を超えて一緒に学ぶ「プロジェクト」と呼ばれる時間があります。
まず驚いたのは、1年生がおとな(教員代わり)の膝の上で授業を受けていたことです。それをまわりもとやかく言わない。授業中にソファで休んでいる子もいましたし、その子がリラックスできるように配慮されているんです。私が通っていた小学校とまったく異なる、温かい空間でした。
それに、全校ミーティングでは学園の全員で議題の決を採るのですが、小1から学園長の堀さんまで、みんなが平等に1票ずつ持っているのもすごいと驚きました。