関西地方に住む主婦の後藤亜衣さん(仮名・30代)は、スポーツ少年団に通う小学生の息子がいる。2月に、比較的大きな大会が控えていたが、感染拡大を案じた運営側が今年初めに中止を決定した。息子達は泣きじゃくったが、教室の指導者が教えてくれた、他チームの親の言動に大きなショックを受けたと話す。
「実は、息子が通う小学校で生徒、それも兄弟の感染が発覚し、それは自治体のホームページでも公開されていました。それを逆手にとって『あのチームと試合をしたら感染が拡がる』と事前の会合で指摘されたというのです。感染した生徒が出たのは事実ですが、別に隠していたわけでもないし、公開されている情報以外に濃厚接触者がいたわけでもありません。それなのに、まるでバイキン扱い。大人達がこれですから、子供達にもかなり影響が出ています」(後藤さん)
実際、後藤さんの息子は、通っている塾で他校の生徒から「お前の学校はコロナだから塾に来るな」と言われ、あまりのショックから塾を休んだという。そして、そんな噂が立ったものだから、2~3ヶ月後に予定されていた練習試合も全てキャンセルに。後藤さんは「他チームや、他学校の生徒や親からも差別されている」ようにも感じている。
次々と姿を変える新型コロナウイルスをどうとらえ、どのように対応するのか。科学的に誠実に内容を伝えようとすることと、感情的な受け止め方の指南は両立しづらいものだが、その結果、人々の間ではオミクロン株への対応をめぐって二極化した議論が主にネットで展開され分断がすすんでいるかのように見える。大人達は大人だけでやりとりしているつもりかもしれないが、子供達は実際には気づいているし、目の当たりにしている。だからこそ、子供達の間でも大人達の争いをコピーしたかのような悲しいやりとりが起きてしまっていることに、我々大人達は恥ずかしさを覚えるしかない。
正解など誰もわからない、そんな問題に直面した時の対処は非常に難しく、何かしらの結果が出た際には、一方は断罪され社会的な地位を失うかもしれない恐怖もある。だからこそ大人達にはより慎重で冷静な言動が求められるし、その目の前の争いは何のためになぜ起きているのかを見つめ直すべきではないのか。我々は当事者であると共に、我々の言動こそが、子供達に多大な影響を及ぼしていることを、絶対に忘れてはならないのだ。