映画ジャーナリストの斉藤博昭氏も「数年前まで2時間半を超える映画は、ここまで多くありませんでした。2時間半以上、あるいは3時間の作品となると、年に何本かという“特別感”を与えていたのです」と指摘する。
なぜ今、“2時間半”が上映時間のひとつのスタンダードとなったのか? 斉藤氏にその理由を分析してもらった。
「まずマーベル映画、中でも『アベンジャーズ』、特に最終作『エンドゲーム』(3時間1分。2019年公開)の特大ヒットが理由として考えられます。複数のヒーローが一堂に会するドラマなので、各エピソードをそれなりに追うだけで長尺が必要になります。マーベルでも際立って長いこれらの作品がヒットし、観客にボリュームとしての満足感を与えました。
次に、配信との関係です。ハリウッドのスタジオは近年、『劇場で見せるべき作品』と『配信を含めた、あるいは配信メインで稼ぐ作品』を差別化し、前者に大作感、つまり長尺の特別感を容認している気がします。逆に2時間だとコンパクトで見劣りすると考えているのでは? 長さが気になる人は、劇場公開とそんなにタイムラグのない配信でゆったり観る選択肢もできました。
また、シネコン以前の時代は、2時間半超えの作品は劇場に嫌われました。1日の上映回数が減るからです。しかし(スクリーンが同一施設内に複数ある)シネコン時代は、ヒットすれば長尺作品でも上映回数を増やすことが可能に。以前から様々な監督が『自分の語りたい作品に編集すると4時間、5時間になってしまう』と話していました。この状況で、詰め込みやすくなっているのでしょう」(斉藤氏)