ショートプログラムの演技を終え、リンクの穴があった箇所を確認する羽生結弦(時事通信フォト)

ショートプログラムの演技を終え、リンクの穴があった箇所を確認する羽生結弦(時事通信フォト)

 羽生選手は昨年4月の世界国別対抗戦でも直前の6分間練習で自分が跳んだ際に出来た穴にハマって失敗したことがあり、『自分が跳んだ穴に思いっきり入ってしまったので、しょうがなかった』とも語っていました。今回、あえて『他のスケーターの穴』と言及したのは、直前の練習で自身がつけた穴にまたハマった、という誤解を解き、正確な状況を説明する意図でしかなかったはずですが……。

 羽生選手が他の選手によって不利益を被ったというように解釈されると、多くの熱狂的なファンが暴走する可能性もあるので、場合によっては不穏なことになるかもしれないと思いました」

「穴を作ったのは誰だ?」

 羽生の熱狂的なファンによる暴走といえば、2016年の世界選手権で起きたことが記憶に新しい。SP前の公式練習でカザフスタンのデニス・テン選手(故人)と衝突しそうになった羽生が「それはないだろ、お前」と声を荒らげたことが報じられると、結果的に銀メダルに終わった羽生の妨害をしたとして、テン選手のもとに日本からの誹謗中傷メールが殺到したのだ。前出・スポーツライターが続ける。

「今回も案の定、『穴を作ったのは誰だ』と特定しようとする動きが始まりました。ロシアの『スポーツ・エキスプレス』は熱狂的なファンたちが調査し、ロシア選手のものだと突き止められたとして『羽生選手のファンから命を狙われている』とまで報道しています。さらに、IOC(国際オリンピック委員会)が『法的な協議が国際スケート連盟と必要になった』とフィギュア団体のメダル授与式を急遽中止したのも、この騒動が原因ではないかと報じています。【*注/別の報道では、金メダルだったROC(ロシアオリンピック委員会)にドーピング疑惑が浮上したとも指摘されている】

 直前練習を放送するテレビ番組で解説者が、羽生選手が優先となる時間帯に羽生の軌道上にいたロシア選手を『邪魔しましたね、あの人』と大げさに語っていたことなどもあり、日本のメディアが“羽生ファースト”を煽りすぎた面もありますが、場外戦が過熱する事態になってしまっています。

 SPでアクシデント以外の羽生選手の演技は完璧で、調子がいいことは見ていてわかる。前回大会でのネイサン・チェン選手がそうだったように、順位争いのプレッシャーから解放されたことによって、フリーでは世界初の4回転半ジャンプなど起死回生の演技ができる可能性もあるからこそ、雑音は控えたいところです」

 羽生は奇跡を起こせるか。

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