今なお人気のトランプ前大統領が、米国を“解体”する日

 そもそも米国は“持てる者”が1%、残る99%が“持たざる者”と言われるほどの格差社会だ。犯罪件数は日本とは比べ物にならないほど多く、殺人事件の過半は銃によるもの。持たざる者が困窮する状況は政権が交代しても変わらず、いかに株価が上昇しようと、何もかかわりのない人々の間に鬱屈したムードがあるのは、日本と同じだ。

 そのうえにさらなる分断をもたらしたのが、2020年の大統領選挙である。このとき、共和党のトランプ前大統領と民主党のバイデン現大統領が激突したことは記憶に新しいだろう。最終的に、多くの国民は「米国に民主主義を復活させること」を求めてバイデン政権を支持したが、この選挙は、両陣営の支持者の対立を決定的に深めることにつながった。

 2021年1月には、トランプ前大統領の支持者によって、連邦議会議事堂が襲撃されるというセンセーショナルな事件が発生したが、それにもかかわらず、いまだ米国内でのトランプ人気は根強い。一方のバイデン政権は、当初の期待値が高かったせいもあるが、コロナ対策の失策や、インフレ加熱に国民生活が脅かされている影響などもあって、支持率が低下している。2022年の秋には、大統領選挙の中間選挙が予定されているが、ここで民主党の敗北――それも惨敗を予測する声も上がっている。そうなると、考え得るのがトランプ政権の復活だ。

トランプ前大統領(写真/AFP=時事)

トランプ前大統領(写真/AFP=時事)

「トランプ前大統領の基本構想は『アメリカンファースト』ですが、これは突き詰めると、米国の従来型の体制――米ドルと金融、軍事による世界覇権――を打破すべく、米ドルや米軍を世界から引き上げて、一ローカル国家に戻るというもの。この構想の下に政治が断行されれば、米ドルは基軸通貨としての役割を終え、米軍は世界の警察として機能しなくなる可能性があります」(長嶋さん)

 そうなれば、米国の子分のような位置づけにある日本が多大な影響を受けるのはもちろんだが、世界の勢力図も激変するのは間違いない。

 さらに、米国内においては「もともと共和党は中央政府を嫌っている。ですから、たとえば米国債などの負債はコロンビア特別区(ワシントンDC)に押し付け、フロリダ、アリゾナ州などを皮切りとした、分離・独立のような動きまで起きるかもしれません」(長嶋さん)。にわかには信じがたいかもしれないが、こうした米国の“解体”までもが、絵空事ではない、ということだ。

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