人間の脳のメモリは小さい。「脳のメモ帳」とも呼ばれる脳のワーキングメモリの容量は小さいため、積極的に忘れる必要がある(写真/PIXTA)

人間の脳のメモリは小さい(写真/PIXTA)

「記憶の学校」の講師を務める中原好さん(28才)は、2019年に日本人女性初となる「IGM(世界記憶力グランドマスター)」の国際資格を取得。1時間で1260桁の数字を記憶したり、15分で90名の顔と名前を記憶するなど、日本人女子ランク1位の記憶力を持つ。しかし、「記憶術」を勉強し始めた24才までは、ごく普通の記憶力だった。

「学生時代の成績は決していい方ではありませんでしたし、暗記も得意ではありませんでした。中学時代は人間関係がうまくいかず不登校になって、高校受験も2次募集でギリギリ合格。ですが、そこも中退して通信制の高校に編入しました。『記憶力がいい人は高学歴』とイメージする人が多いようで、『なんだ、東大卒じゃないのか』とがっかりされることもあります」(中原さん)

 中原さんは、記憶は「才能」ではなく「技術」だと続ける。

「記憶力は、トレーニングによって磨かれます。スポーツ選手と同じです。技術を身につければ、覚えたいものは何でも自分でコントロールして記憶できるようになります。

 私が講師を務める学校には3~78才の受講者がいますが、宅地建物取引士や社会福祉士、行政書士の試験に合格した人、TOEICの点数が著しく上がった人、なかには速読できるようになった人もいます。記憶力を磨くことで集中力や頭の回転も研ぎ澄まされるため、『仕事が短時間で終わるようになった』という話もよく聞きます」

 年齢問わず、誰でも「記憶術」によって人生を変えることができる。そのヒントは意外なところにあった。

記憶力を高めるには生活習慣の改善から

 まず、記憶力を高めるために欠かせないのが、「脳への刺激」だ。

「最近の脳科学の見解で、“もの覚えがいい人”は、“ものを覚え続けている人”だとわかっています。何かを覚えようと新しい情報を取り込むと、記憶にかかわる脳の細胞に刺激が加わり、脳の神経細胞が増える引き金になるのです。重要なのは、その刺激を継続すること。それには、覚えようとする『やる気』と、達成できるという『その気』の両方を維持することが大切です」(枝川さん・以下同)

「自分にはできない」という消極的な考えは、「その気」をなくし、「やる気」も奪ってしまうので禁物だ。

 また、脳への刺激と聞いてパズルなどの脳トレをイメージする人もいるかもしれないが、それだけでは不完全だという。

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