特に日本では昨年12月、世界に先駆けて同薬の「原発不明がん」への適応追加が承認された。原発不明がんとは、発見時には転移が進んでいる“どこが発端かわからない”がん。国内では年間約7500人が罹患しているとされる。『親子で考える「がん」予習ノート』(角川新書)の著者で国際医療福祉大学病院教授の一石英一郎医師が言う。
「現状、各学会の診療ガイドラインは基本的に肺がんや胃がんなど部位別に治療法が決まっており、“原発巣がわからないと治療すらできない”状況です。いくつかの抗がん剤を併用する以外なく、確立した治療法はありません。原発不明がんの5年生存率は6%を下回りますが、オプジーボを使った治験では腫瘍が小さくなるなどの効果が一部に見られたようです」
一石医師は、世界に先駆けての承認を「英断」と評する。5年後を待たずとも適応される部位は拡大されていくと予想されており、がん治療の世界を今この瞬間も変革している。
※週刊ポスト2022年3月18・25日号