性別の違いで、何かが大きく違ったりしないのでは?
――では、『いいとしを』の連載の経緯もお伺い出来ますか?
オカヤ:いまフェミニズムや女性の立場について考える機会が増えているじゃないですか。いろいろな事件や出来事を目にして思うところや怒りがないわけではないんですけど、自分だって「おじさんにはこういう対応をしておけばいいんでしょ?」とナメた態度を取ってきた過去があるわけで。
こういう状況で自分が男の人だったら、何を考えるか描きたいなと思ったんです。かといって、、「男もつらいんだよ」というだけの話にはしたくないし、普通に暮らしている人はどんな感じかを考えました。
――主人公の俊夫や実さん(俊夫の父)にモデルはいるんでしょうか?
オカヤ:モデルはいないですね。実の見た目は、ちょっとウチの父親に似ているかもしれません。中身は似ていないですけど。
――前半に実さんがトイレで用を足しながらカレンダーを破ろうとして、ピッと壁を汚してしまうシーンがあります。普段、女性には見えない部分ですが、リアルに感じました。
オカヤ:うちの父親も母親によく「あれ、臭いんだから。やめてよ」みたいなことを言われていましたし、ネットでも「トイレの飛び散らかしは迷惑」みたいな書き込みを見かけるじゃないですか。
それで、なんで飛ぶんだろう?と考えた時に、自分もトイレのなかで動いちゃったりしているなと。確かに女性には見えない部分ですけど、性別の違いで何かが大きく違うってことはないんじゃないかな?と思っているところがあります。
――そういったオカヤさんの人間観が随所に出てきますよね。洗濯物をピンピンと伸ばして干す俊夫さんに、実さんが「ああいうの どこで習うんだ」と問うシーンも印象に残っています。
オカヤ:あの年代のお父さんは、洗濯をしたら干すことはわかっていても、「こうしたらキレイに干せる」ってことまで教わっていないんじゃないかと思って。男はちょっとぐらい汚くてもいいみたいな社会通念もあるだろうし、何気ないことを検索して調べる習慣もなさそうだし。私なんかは分からないことがあるとすぐ検索しちゃうんですけど。
――世代間の差がさりげないエピソードに滲んでいて面白かったです。40代の息子も亡き母から聞いたのではなく、「旦那が洗濯物を干してくれたのはいいんだけど、しわくちゃで干し直し」みたいなSNSの投稿を見て知っていた、と。
オカヤ:私自身がSNSを見る方で、細々と反省することが多いんです。家事が出来ない旦那に対する書き込みを見るたび、絶対に私も怒られるヤツだ、すみません!って(笑)。