杉本:終わった後の感想戦もなかなか声をかけにくいんです。2人とも無言であれだけ考え込むのも珍しいと思います。
永瀬:お互いに集中して考えていると、4~5分くらい沈黙することはザラにありますね。自分はあまり喋るほうではないですし、藤井さんも沈黙は苦にならないタイプなので助かっています。
杉本:よってお昼のお弁当の注文は開始前に聞くのがベストという結論に達しました(笑)。感想戦後に聞いて注文すると、かなり時間がかかるので。
──夕飯は3人で食べることも多いそうですが、どんな話をされますか。
杉本:ひたすら将棋の話ですね。私と藤井竜王の2人の時は、パソコンや食べ物の話をすることもあります。
永瀬:藤井さんがパソコンについて丁寧に教えてくれたことがありますが、こちらの知識がゼロなのでよくわかりませんでした。藤井さんは上級者すぎて、初心者の気持ちがわからないんです(笑)。冷却機能とかいろいろ説明してくれたけど、訳がわからない。私は動けばいいかな、と(笑)。
杉本:記憶に残っているエピソードがあります。研究会の後に食事を終えて夜8時半くらいになり、そろそろ帰るのかなと思っていたら、また将棋の話が始まった。さすがに口頭で終わるかと思いきや、盤上に並べ出したんですよ。どれだけ熱心なんだと感心しましたね。
永瀬:なんの将棋を検討したのかも覚えています。終電の時間はギリギリだったんですけどね(笑)。でも藤井さんとの検討は本当にかけがえのないものですから。
コロナ禍以降はオンライン対局になってしまったので、一刻も早く名古屋に行けることを熱望しています。
──藤井さんの意外な一面はありますか?
杉本:忘れ物をしたことがありましたよね。
永瀬:ああー。
杉本:研究会後に夕飯を食べに行った際、私の車に藤井竜王が荷物を置いていたんです。食事後に藤井竜王が「駅が近いからこのまま帰ります」と。私も気づかずに「さよなら」と言ったら永瀬さんが「藤井さん、荷物を忘れています」と(笑)。
永瀬:藤井さんは一つの物事に100%集中するタイプなので、そういうことがあるんでしょう。自分も見習って、忘れ物をするぐらいじゃないといけません(笑)。
(後編につづく)
※週刊ポスト2022年5月20日号