エスメラルダは偏見を持たず、権力にも屈しない、勇敢で美しい女性。その生き方、そして情熱的な踊りは、見る人を魅了する

エスメラルダは偏見を持たず、権力にも屈しない、勇敢で美しい女性。その生き方、そして情熱的な踊りは、見る人を魅了する

ステンドグラス、鐘、聖歌隊…まるでノートルダムそのもの

 見どころのひとつは、なんといってもノートルダム大聖堂のセットだ。

 実際のノートルダム大聖堂は2019年の火事で歴史的な被害を受け、いまなお復興が待たれるが、本作では大聖堂の顔ともいえるバラ窓のステンドグラスが本物と見まごうほど細部まで再現されている。

 また、カジモドの棲家でもある鐘突き塔の内部には、入り組むように吊り下げられた7つの鐘があり、カジモドが全体重をかけて紐で引っ張ると大きく揺れて鳴り響き、まるで大聖堂の内部にいるかのような錯覚を覚える。

 そこに「クワイヤ」と呼ばれる聖歌隊が並び、歌声を響かせて荘厳さを増幅させる。この「クワイヤ」は他の劇団四季ミュージカルにはないだけに、この作品らしさを一層際立たせる存在でもある。

 そして、メインキャスト四者四様の圧倒的な演技と歌唱は、その一つひとつが見せ場に。初めて恋をしたカジモドの葛藤、女性も見惚れるエスメラルダの妖艶なダンス、軽薄そうな色男から一変して一途にエスメラルダを愛するフィーバス、愛と欲望をこじらせた憎たらしいフロロー…

 実際、四者それぞれの“悲しみ”をのせた歌声には、涙にむせぶ声がのっけから最後まであちこちから漏れ聞こえる。

 本作は、ディズニーのアニメーション映画とは結末がまったく異なるところも、注目したいポイント。すべての登場人物が抱える「光と闇」がより生々しく、美しく描かれており、大粒の涙なくして観ることはできない。

 怪物か人間か、私たちは何者か――深く重く、観る者の心に問いを残す『ノートルダムの鐘』横浜公演は、8月7日まで行われる。

【STORY】
舞台は15世紀末のパリ・ノートルダム大聖堂。生まれながらに障害を抱えた孤児のカジモドは、ノートルダム大聖堂の大助祭・フロローによって鐘突き塔に閉じ込められ、密かに育てられる。外の世界へ憧れを募らせるカジモドは、祭りの日、ついに街へ飛び出す。しかし、みにくい容姿があらわになったとたん、「怪物だ!」と瞬く間に民衆たちの嘲笑の標的に。彼を助けたのは、美しいジプシーの踊り子・エスメラルダ。生まれて初めて人の優しさに触れたカジモドは彼女に心をときめかせるが、そこに居合わせたフロローと大聖堂の警備隊長・フィーバスもまた、彼女に惹かれてしまう。入り組んだ愛憎は連鎖し、やがて思わぬ結末へ…。

【Information】
創立70周年記念公演ミュージカル『クレイジー・フォー・ユー』上演決定!! 2023年に創立70周年を迎える劇団四季の記念公演として、ラブ・コメディの金字塔『クレイジー・フォー・ユー』が、8年ぶりに上演(日程:2023年4~7月/会場:神奈川県 KAAT神奈川芸術劇場〈ホール〉)。軽快なアメリカンミュージックにタップダンスを用いた斬新なダンスナンバー、ハッピーエンドのボーイ・ミーツ・ガールのストーリーは気分が上がること請け合い。

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