独立後、磨きがかかったトーク力
稲垣がいう“グループ”時代は、なかなか聴くことができなかったトークだ。SMAP内で年齢的に真ん中だったことから“中間管理職”と呼ばれ続けた稲垣は、たとえば地方コンサートのMC前後、マネジャーから託された「夜、打ち上げで何料理を食べに行きたいか」をメンバーに聴く係を担っていたこともあったそうだ。先月15日に放送された『草なぎやすともの うさぎとかめ』(読売テレビ)にゲスト出演したときにも、「(自分と草なぎは)2人とも控えめなタイプだったから」と話している。当時、ファンに向けてのトークは他メンバーに任せていたようである。
だが、「新しい地図」では年長者。加えて、2017年1月から担当している『編集長 稲垣吾郎』(文化放送)、2019年9月から『THE TRAD』(TOKYO FM)という週3本のラジオ番組、さらには、『ななにー(7.2新しい別の窓)』(Abema TV)内の「インテリゴロウ」での小説家や映画監督らへのインタビューが、稲垣のトーク力に磨きをかけているのは間違いないだろう。作家へのインタビューや雑誌連載もある。
コロナ禍となり、稲垣は自身のメンタルが「ラジオに助けられた」とも言っていた。懸命に稽古をしてきた舞台がコロナの影響で早々に中止になったことも経験した稲垣。それでも「ニューノーマル」というポジティブなワードが彼の口から度々出てきたのは、ラジオ番組とインタビュアーをつとめる配信番組や雑誌での人とのやりとりに支えられていたのかもしれない。
そして大好きな舞台だ。「皆さんの前に立てるのは幸せなこと」と清々しい表情で話す稲垣に、9日から立つ『京都劇場』の魅力も聴いた。
「客席の広さと空間、音もすごくいいですし、劇場的にはすごく演じやすいステージ。京都の中心にあって場所がすごくいいので、僕自身、ちょっと時間があると嵐山をはじめ、色々な場所に行けます。皆さんにとっても、交通の便がいいので利用しやすい劇場ではないでしょうか。劇場というのは何度もやると愛着がわいてくる。1回経験しているので楽しみだなと思います」とのことだ。
1回目は2018年8月の「FREE TIME, SHOW TIME 『君の輝く夜に』」だった。あれから約4年。「新しい地図」の見え方や活動実績、稲垣自身の経験値も着実に積まれている。「吾郎漫談」含め、「京都劇場」でのミュージカル『恋のすべて』がどのように進化しているのか。観てみたい。
◆山田美保子
『踊る!さんま御殿!!』(日本テレビ系)などを手がける放送作家。コメンテーターとして『ドデスカ!』(メ~テレ)、『アップ!』(同)、『1周回って知らない話』(日本テレビ系)、『サンデージャポン』(TBS系)などに出演中。CM各賞の審査員も務める。