家事の得手、不得手に性別は関係なし
そして令和になっても家政夫ドラマが続く。『私の家政夫ナギサさん(以下、わたナギ)』(TBS系・2020年)を覚えているだろうか。仕事はできるけれど、家事がまったくできない会社員の主人公・相原メイ(多部未華子)が、家事代行サービスを依頼。現れたのは、家政夫の鴫野ナギサ(大森南朋)だった。最初は毛嫌いするものの、ナギサの家事を超えた細やかな気遣いにメイの心が動く。会社員時代に部下を傷つけてしまった過去を持つナギサも、心が溶解されて、2人は婚約をする……という物語。
ハードボイルドな役柄の多かった大森南朋さんのエプロン姿も相まって、ドラマは人気上昇。その影響で、家事代行サービスへの依頼も増えたという。私も忙しいときには家事代行サービスを利用することが多い。少し前までは「贅沢だ」「(女性として)サボりだ」と言われ、背徳感があったことも確か。でも今では、時間を有意義に使うためのシステムのひとつとして前向きに捉えている。
この流れを見て、生きやすい時代になったとつくづく思う。そもそも、家事の得手、不得手には性別は関係ない。昔、私もよく家族、親戚一同から言われていた「料理くらいできないと」「座っていないで、(食器の)片付けを手伝いなさい」。その傍らで「よく食べて偉いね、さすが男の子!」と、食後だらだらしているのに褒められる従兄弟をうらめしく見ていたものである。
家事は男女どちらが行っても構わない。家政夫ドラマが増えたのは、家事は女性がするべきもの、男性は家事を手伝うものという風潮がなくなった現れだ。
ドラマは最終回を迎えるが、『家政夫のミタゾノ』は今秋、舞台化されることが決まった。前述の歴代作品たちが遂げてこなかった、先へ進もうとしているのだから素晴らしい。これは見たい。ファンとしては、生のミタゾノさんを見たい!
【プロフィール】
小林久乃(こばやし・ひさの)/エッセイ、コラムの執筆、企画、編集、プロモーション業など。出版社勤務後に独立、現在は数多くのインターネットサイトや男性誌などでコラム連載しながら、単行本、書籍を数多く制作。著書に、30代の怒涛の婚活模様を綴った『結婚してもしなくてもうるわしきかな人生』(KKベストセラーズ)、『45センチの距離感 -つながる機能が増えた世の中の人間関係について-』(WAVE出版)がある。静岡県浜松市出身。Twitter:@hisano_k