巷間よく言われる日本人の発想の固定化とか、オリジナリティのまずさといったものは、一本道の路線、生き方しか残されていないような社会で、停滞した結果。かつての高度経済成長の時代は創業者の時代でした。戦争で全部廃墟になったところから、本田宗一郎とか、ソニーの井深大とか盛田昭夫といった世界的経営者が出てきた。
現代もユニクロの柳井正やソフトバンクの孫正義などの創業者がいます。彼らはやっぱりユニークなことをやります。ただ、そのポジションが固定化していって、起業家の時代から守りの時代に入り、そして大企業になって硬直してしまう。そこに潜む、現代日本の病理の根本を衝かなければ、政治も社会も改革はできないと考えています。
【プロフィール】
猪瀬直樹(いのせ・なおき)/1946年長野県生まれ。作家。1987年『ミカドの肖像』で大宅壮一ノンフィクション賞。1996年『日本国の研究』で文藝春秋読者賞。東京大学客員教授東京工業大学特任教授を歴任。2002年、道路公団民営化委員。2007年、東京副知事。2012年、東京都知事。2015年、大阪府・市特別顧問。主著に『天皇の影法師』『昭和16年夏の敗戦』『猪瀬直樹電子著作集「日本の近代」(全16巻)』があるほか、近著に『日本国・不安の研究』『公(おおやけ) 日本国・意思決定のマネジメントを問う』『カーボンニュートラル革命』など。2022年夏の参院選に、日本維新の会の公認候補として全国比例に出馬予定。