厚労省は「答えようがない」
専門クリニックに診てもらうのが難しくなれば、患者は多少通院に時間がかかっても、最初に手術などの治療を受けた大病院に頼らざるを得ない。だが、前述のように大病院はもともと利益が出ない外来患者を外部のクリニックなどに出してきた経緯がある。
「私が勤務していた大病院でも外来の化学療法患者用のベッド数はわずか。大量の患者を治療するだけのキャパシティがないケースが多い」(同前)
クリニックで“治療はできない”といわれ、大病院に通おうにも“患者がいっぱいで受け入れは無理です”と断わられる―そんな事態を危惧する声である。
前出の上氏がいう。
「2人に1人ががんで死ぬ時代。この24時間化というのを一刀両断にやると確かに、がん難民の受け皿がなくなるという可能性はある。患者にとって治療してくれる医療機関がなくなることは大変なショックのはずです」
患者の副作用リスク対応のためのルール厳格化によって患者が大変な思いをするのであれば、本末転倒になりかねない。厚労省はどういった現状認識になるのか。
保険局医療課の課長補佐との一問一答だ。
──24時間相談体制が組めない医療機関は「外来腫瘍化学療法診療料」を全くもらえなくなるのか。
「そうなりますね。でも9月までバトンタッチ期間がありますので、そこで体制を整えることができれば大丈夫です」
──相談体制を組むのが難しい病院やクリニックには、外来の抗がん剤治療はやめてしまおうという動きがある。そうなると10月以降に“がん治療難民”が増えるという指摘がある。
「そういうことについては……ここではお答えしようがありませんので」
改定にあたって24時間体制を取れている病院・クリニックがどれだけあるのかといったデータを把握しているのかという問いには締め切りまでに回答がなかった。
あなたの病院は大丈夫か。タイムリミットの10月1日まで、残された時間は少ない。
※週刊ポスト2022年6月24日号