「日本人は?」という発想自体が間違っている

 最初は移民や移住という形でアメリカに入ります。そして、アメリカの場合、これが非常に重要なのですが、大学や大学院が人材交流の場になります。ここに例示したように、スタンフォード、UCLA、ハーバード、MITといった大学をキャッチャーとして、そこに世界中から優秀な学生を集めます。そして、そのまま上に行く人と、母国に帰る人、それから他のメガリージョンに行ってGAFAMなどに就職するという人とに分かれます。そこでまた、経験や人脈を培って、最後は自分で起業するということになります。

 以上のように、アメリカにはスタートアップを助けるいろいろな仕掛けがあります。このホップ・ステップ・ジャンプというプロセスが大事なのです。日本の場合は、まず大学というのが単なるアカデミックな学びの場となっていて、世界から優秀な若者を呼び込めません。

 つまり、日本経済や日本企業に活気を取り戻すにはどうしたらいいかという時に、考えるべきは「日本人はどうしたらいいか」ということではないのです。日本人かどうかは関係ありません。カスカディアやベイエリアに見られるように、世界中から才能のある人材が集まってきて、彼らの欲望や野心を事業化していける場があるかどうか。あれば、そこにカネや情報が集まり、さらなるイノベーションが起こっていく好循環が生まれるのです。

※大前研一『経済参謀 日本人の給料を上げる最後の処方箋』(小学館)より一部抜粋・再構成

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