ユニコーンも多数──ベイエリア/シリコンバレー
それから、ベイエリアは、もともとはシリコンバレーの中心地パロアルトやサンノゼなどに多くの企業が立地していました。その拠点となっているのはスタンフォード大学ですが、その周辺では住む場所が足りないということで、立地エリアがサンフランシスコまで拡大し、湾の反対側のバークレーやフリーモント、ヘイワードなども包括したサンフランシスコ湾南側全体に広がりました。サンフランシスコからサンノゼまでは、国道101号線が渋滞していなければ、車で1時間ちょっとで行けると思います。そういうエリアに、文字どおり世界中から人、カネ、モノが集まっているわけです(図表2参照)。
代表的な企業は、アップル、グーグル、メタ(フェイスブック)、テスラ(2021年12月にテキサス州オースティンに本社を移転)などです。これらの企業の時価総額と伸び率を見ると、いずれも大きく繁栄しています。
それらの巨大企業に続く会社としては、このベイエリアに次々とユニコーン企業が誕生しています。これらも非常に大きなお金を集めていて、その企業価値は、日本円にしてざっと数兆円規模になっています。
このベイエリアにおける最近の動きとして、巨大ハイテク企業による自動運転関連企業への投資の増加が挙げられます。今はMaaS(Mobility as a Service=マース/ICTを活用してすべての交通手段を自動運転でシームレスにつなぐ新たな「移動」の概念)という考え方で人々の移動を極限まで効率化していく方向に急速に進んでいますが、シリコンバレーはそのMaaSの世界を制して、次の巨大産業も自分たちが支配しようとしています。その詳細は、拙著『経済参謀 日本人の給料を上げる最後の処方箋』にまとめてあります。
急成長企業CEOも「海外」人材
それで、GAFAMに続くような急成長をしているIT企業やユニコーン企業の創業者をまとめたのが図表3です。GAFAMの経営陣には、アメリカに生まれ育った人が少なく、逆に世界中から才能が集まってきていますが、このシリコンバレーの急成長企業やユニコーン企業も、やはり移民や留学生が起業した例が多いです。
まず、時価総額が断トツの45兆円に達しているエヌビディアを創業したのは、台湾出身のジェンスン・フアン(黄仁勲)氏です。この会社は、画像処理装置GPU(グラフィック・プロセシング・ユニット)の開発で頭角を現わし、コンピューターからゲーム、自動運転車など、あらゆる最先端技術の開発に欠かせない最強の半導体をつくっています。
その次が、オンライン決済のストライプ。企業評価額は約10兆円です。CEOはアイルランド出身のパトリック・コリソン氏。弟のジョン・コリソン氏が共同創業者になっています。
ユニコーン企業3位のスペースXのCEOは、前述したイーロン・マスク氏。南アフリカ出身です。5位にランキングされているインスタカートは食品宅配アプリの会社です。これがだいたい4兆円ぐらいの会社で、CEOはインド生まれのアプアバ・メフタ氏です。
さらに次がUiパス、RPA(ロボットによる業務の自動化)ソリューションの会社です。この企業評価額が4兆円弱ですけれども、CEOはダニエル・ダインズ氏、CTOがマリウス・ティルカ氏で、2人ともルーマニアの出身です。
このように、GAFAMに続く新興企業の創業者の顔ぶれを見ても、アメリカに生まれ育った人はほとんどいないのです。