インターネットが普及した今、誰でも加害者になり得る怖さもあるのではないか。加害者は正義のつもりで書き込むことが多いという。厳罰化されたことで、「訴えられるかもしれないから何も言えなくなる」「言論の弾圧になる」とおそれる人がいるかもしれないが、松永さんは
「意見と誹謗中傷は全く違います。正当な意見なら発言は自由です。しかし、「死ね」と言ったり、根拠のない憶測による侮辱は誰に対しても言ってはいけない誹謗中傷です」と訴える。
交通事故をなくすため、被害で苦しむ人がいなくなるように、と活動を行ってきた松永さんは、自身や家族が誹謗中傷を受けたことで誹謗中傷問題に取り組むようになった。
「発信する前に、それは意見なのか誹謗中傷ではないか、いったん考えてほしいです。それが言論の自由を守ることにもなるんです」
遺族の被害者支援を行ってきた「一般社団法人関東交通犯罪遺族の会」代表理事の小沢樹里さんもこう話す。
「亡くした命ほど大切にしたいという気持ちは、残されてしまった遺族だからこそ思うものです。亡くなったから人権が法律の中でなくなっても、遺族の心には人権より愛という想いがあるから、法律と社会のと隙間で余計に苦しんでいます」
誹謗中傷がいやならSNSを使わなければいい、と言ってくる人もいるが、それよりも何百、何千倍以上のあたたかな励ましの言葉をいただいている。そして発信するための大切なツールだから自分は辞めない、と松永さん。
「SNSは使い方さえ間違わなければ素晴らしいもの。よりよいインターネット社会にするために、教育やガイドラインの整備ももっとされていくべきではないでしょうか」
取材・文/和久井香菜子