ウクライナの小麦畑(共同通信社)

ウクライナの小麦畑(共同通信社)

「食糧は“武器”として他国を脅す材料となり得ます。もともと、食糧戦争はアメリカが作り出した仕組みです。まずは自国農業に補助を出して増産し、各国に安価で輸出します。そして相手国に関税を撤廃させ、安い輸入農産品に依存させることにより、相手国の農業生産能力を低下させます。その後で、異常気象などを口実に大幅値上げしたり、輸出制限をちらつかせることで、相手国を外交的にコントロール下に置くことができるわけです」

 ただでさえ、世界を襲う異常気象により、ほかの地域では高温と干ばつで小麦は不作。小麦価格は過去最高水準にまで達している。さらに現在の状況下で、ロシアが輸出を止めたり減らしたりすれば、貧しい国や食糧自給率が低い国から順に耐えられなくなるだろう。

 このまま食糧不足や食糧価格の高騰が続けば、世界で約5000万人が飢餓に陥る恐れがあると、この4月に国連世界食糧計画がまとめた報告書には記されている。餓死者も途方もない数にのぼるだろう。その中には、多くの幼い子供も含まれる。「世界飢餓計画」を意図的に推し進めようとしているのだとしたら、プーチン氏の行いは、まさに「悪魔の所業」だ。

 日本は直接ロシアやウクライナから小麦を輸入している状況にない。安心していいかと思いきや、全世界的に小麦不足となれば、価格高騰は避けられない。それどころか、日本は最も影響を受ける国だという。

「西側諸国はヨーロッパもアメリカもかなり高い食糧自給率を誇り、エネルギー自給率もある程度高い。輸入が止まっても、しばらくは耐えられるでしょう。ところが、工業製品の輸出ばかりを奨励して伸ばし、“食糧はお金を出して外国から買えばいい”という方針だった日本は、食糧が封鎖されると一巻の終わりです。真っ先に“兵糧攻め”でやられてしまうのです」(前出・鈴木さん)

 食卓から、ファミレスから、パンやパスタ、うどんが消えるのも時間の問題。食糧自給率の低い日本は他国にかなり依存しており、真の意味で「独立国」とは言えない状況だ。飽食の時代といわれて久しいが、食糧が入手できなくなる日のことを念頭に「食糧安全保障」を真剣に考えるときがきている。

※女性セブン2022年7月7・14日号

出荷を待つ小麦の袋(共同通信社)

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「いつでも食べられる」は当たり前ではない(写真/アフロ)

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