2016年6月、参議院選挙の投開票日をアピールして、投票を呼び掛ける若者ら(時事通信フォト)

2016年6月、参議院選挙の投開票日をアピールして、投票を呼び掛ける若者ら(時事通信フォト)

 難しい話である。公職選挙法で決まっていても、そうした違反者を片っ端から逮捕するほど警察も暇じゃないのは事実。昔は選挙違反者の摘発を「落ち武者狩り」と呼んで、選挙後に落選した陣営から逮捕者が出ても、同じように選挙違反をした当選者の陣営は「議員センセイ」なので(厳密には任期開始日からとなるが)逮捕者は出ないと噂される時代もあった。いわゆる金権選挙というやつで、選挙本部でおにぎりの中に1万円札が入っていたなんて時代の話である。もちろんいまはそんなことがない、と信じているが自信はない。

 ちなみに2018年の衆院選では選挙応援に訪れた福島市の市議が有権者におにぎりを配って警察の事情聴取を受ける騒ぎとなってしまった。もちろん中に1万円札は入っていなかったが、現在では昔に比べて選挙違反に対してより厳しくなっている。2019年の参院選で起きた広島の選挙違反事件は記憶に新しいだろう。

 インターネットの選挙違反もまた同様に厳しくなっている。2021年の衆院選では選挙運動にあたるとされたSNSの書き込みなどで11件が違反とされ、警察から警告を受けた。

「やっぱり警告程度で済むんですね。実際、みんなネットで好き勝手してますから」

 確かにこれまでも警告が大半、ましてや未成年の逮捕者は出ていないが、だからといって選挙違反をしていいとはならない。逆にこれまでそういった事例がないからこそ、いつ警察が本気で動くかわからない。日本初の未成年の公職選挙法違反第1号も嫌だろう。ちなみに投票日当日(午前0時から午後8時)はインターネットでも選挙活動は禁止となる。もちろんSNSによる選挙行為も禁止なので注意して欲しい。投票日前日のギリギリ午後11時59分に投稿のつもりがタイムラグで投票日当日になってしまったなんてこともある。ただし選挙に行こうとか、投票に行こうという呼びかけは投票日当日でも問題ない。

「じゃあ『落選しろ』って書き込みはどうですか、受かるためでなく、落選だけが目的です」

 本稿、実のところ彼のこの問いかけがなければ記事にしていない。屁理屈のつもりだったのかもしれないが面白い着眼点だと思う。なぜなら公職選挙法はあくまで当選に関する法律で、落選に関する法律ではないからだ。法解釈として選挙運動は当選運動であって、落選運動ではない。この件に関してはきちんと明文化されていて、2013年のインターネット選挙運動等に関する各党協議会による「改正公職選挙法(インターネット選挙運動解禁)ガイドライン」で以下の見解が示されている。

〈公職選挙法における選挙運動とは、判例・実例によれば、特定の選挙において、特定の候補者の当選を目的として投票を得又は得させるために必要かつ有利な行為であるとされている。したがって、ある候補者の落選を目的とする行為であっても、それが他の候補者の当選を図ることを目的とするものであれば、選挙運動となる。ただし、何ら当選目的がなく、単に特定の候補者の落選のみを図る行為である場合には、選挙運動には当たらないと解されている〉

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