2022年の新発見 顔汗の糖化が毛穴を目立たせる
今年は猛暑が予想されており、顔汗による「メイクのヨレ」「べたつき」「におい」が気になるという人が多いだろう。前述のように、汗が空気中のほこりや花粉、大気汚染物質を引き寄せて付着させ、肌トラブルの原因になる。毛穴を目立たせるのは、これらの物質が毛穴に落ち込むだけでなく、汗そのものが悪さをしている可能性があることが、ポーラの研究により明らかになった。同社のB.Aリサーチセンター長・宗吉裕樹さんは次のように解説する。
「肌の糖化と老化の関係は、さまざまな研究で解明されています。肌のたんぱく質と糖が結合して最終糖化産物(AGEs)が生成され、たるみやくすみの一因となるのです。
私たちが注目したのは、肌に必ず存在する『汗』。本来は体温調節のほか保湿など、肌の健康を保つ役割を担っていますが、汗の成分にはたんぱく質と糖が含まれています。発汗すると同時にたんぱく質と糖が出会えば、徐々に汗の成分が糖化していくと考えられます。これが糖化した顔汗、つまり糖化汗なのです」
肌の角層でAGEsが生成されると、角層自体が硬くなってゴワつき、肌にこびりついて通常の洗顔では落としにくくなる。AGEsは褐色なので黄ぐすみの要因にもなる。
また、真皮でコラーゲン繊維と糖が結合し、コラーゲン同士で固まったり、AGEsに触れた線維芽細胞がダメージを受けると、ハリや弾力も低下。肌老化が進むのだ。
「汗に含まれたAGEsが毛穴の中に入り込むと、真皮ではコラーゲン構造が悪化してゆるみ、毛穴がたるむことが考えられます。表皮ではターンオーバーが乱れたり、未熟な表皮細胞が表層に現れてキメが乱れ、毛穴がすり鉢状に開くなど、毛穴目立ちのリスクが高まります」(宗吉さん・以下同)
汗の成分の糖化は、紫外線によって促進されるため、衣服によって紫外線があたりにくい体の汗より、紫外線にあたる機会の多い顔汗の方が糖化リスクが高いと考えられる。
「汗をかいたらこまめにやさしくふき取ることが大切です。また、糖化に着目した化粧品などを使用し、汗の成分を糖化させないようなケアも有効です」
植物由来のパシャンベエキスとレンゲソウエキスが汗に含まれるたんぱく質の糖化を抑制し、完熟ツルレイシエキスとヨモギエキスにはAGEsによる毛穴目立ちなどの肌への悪影響をブロックする作用が期待できるという。顔汗をかきやすいなら、このような成分入りの化粧品を選び、猛暑と糖化汗から肌を守り、夏老けを予防しよう。
取材・文/山下和恵
※女性セブン2022年7月7・14日号