各力士のインタビューの機会などを思い返すと、日本語が苦手という印象はあまりないが、文字については個人差があるのだろうか。呼び出しのひとりはこう話す。
「モンゴル出身力士は間垣親方(元横綱・白鵬)に代表されるように流暢な日本語を話す人が多い。これは日本語とモンゴル語の言葉の順番(主語・目的語・動詞)が似ていて、単語を置き換えるだけで話ができるからだそうです。そのため欧米出身の力士たちよりも日本語が上達しやすいといいます。漢字はカラオケの歌詞で覚える力士がほとんど。簡単な漢字は読み書きができるが、新聞や雑誌は読めないケースも少なくない。モンゴル出身力士では、大学教授を父に持つ鶴竜親方(元横綱・鶴竜)がいちばん日本語の読み書きが上手いと思います」
優勝した逸ノ城に「おめでとう。よかったね」とLINEを送った後援者には、逸ノ城から「応援ありがとうございました」と返信があったという。ただ、携帯電話(スマホ)の普及が、日本語の読み書きの習得にはマイナスにはたらいている面もあるのだという。前出の呼び出しが続ける。
「日本の高校に相撲留学するモンゴル人が多くなり、漢字の読み書きもできる新弟子が多くなりましたが、入門後に携帯を持つようになると、平仮名を漢字に変換してくれるため、それまで書けた字が書けなくなるケースが増えている印象です。逸ノ城もそうした一人でしょう。日本人でさえパソコンやスマホがあることでどんどん漢字が書けなくなっているくらいですから、外国人にとっても影響が大きいのは当然です」
日本語は「世界で一番難しい言語」と言われるだけに習得は大変だ。力士の本分はもちろん土俵だから、完璧な日本語でないとしても、その思いはファンには伝わる。逸ノ城は、勝ち越し、そして初優勝では終わらない大きな夢を見せてくれることだろう。