1999年に島根大学医学部の京哲教授が、テロメラーゼが働くためのプロモーター(スイッチ)を発見。これをウイルスに組み込めばテロメラーゼが活性中のがん細胞だけで働き、正常細胞では働かない。そのプロモーターを譲り受けた藤原教授がウイルスに遺伝子組み換えを行ない、ひとつの成果として腫瘍溶解ウイルス製剤『テロメライシン』を開発したのだ。
「アメリカで多種類の固形がんに対して第1相試験を実施し、安全性と有効性を調べました。さらに放射線治療を併用することにより、高い効果が得られることも判明したのです」(藤原教授)
日本では消化器がんの中でも放射線治療の奏功率が高い食道がんを対象に放射線とウイルス療法併用の第1相試験を実施、好成績を得られた。現在は食道がんへの第2相試験に期待が寄せられている。
取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト2022年9月2日号