単に気温が上昇するだけではなく、気候のリズムにも異常が表れている。私たち日本人になじみ深い桜でもそれは起きた。
「2017年、米ワシントンD.C.で3月上旬に桜のつぼみが膨らんだのち急に寒波が到来、一気に氷点下になり枯れてしまった。花が半分くらいやられて桜が満開にならなかったのです。これが日本で起きる可能性は充分ある。
九州大学の研究では、2100年には九州の一部ではソメイヨシノが開花しない地域が出現するとされ、九州と四国、静岡県や神奈川県、千葉県の一部では満開にならない地域が出るとのシミュレーション結果が出ています」
秋の温度変化も穏やかになり、紅葉も現在のようなはっきりした色ではなく、あいまいな色合いになっていくだろうと森さやかさんは予測する。
野生動物への影響も大きい。気象予報士の森朗さんは言う。
「自然の環境が変わるということは、生態系も変わります。植物は気温に左右されるものが多いため、影響を受けやすい。植物の変化で木の実などができる場所が変われば、野生動物の分布図も変わってきます。クマやイノシシなど野生動物が山から下りてきたというニュースがありますが、植物のバランスの変化が、動物に影響を与えているのかもしれません」
東京大学大気海洋研究所教授の伊藤進一さんの研究によると、水温上昇によって海産物の生息域が北に追いやられ、国産の鮭やイクラ、しゃこなどは2050年までに消滅するというのだ。
「北海道では鮭ではなく、ぶりが取れるなど、海水温の変化が魚の分布に影響を与えています」(森さやかさん・以下同)
温暖化に伴い動物が小さくなっていく可能性がある。
「恒温動物においては、同じ種でも寒冷な地域に生息するものほど体重が大きく、近縁な種間では大型の種ほど寒冷な地域に生息するという『ベルクマンの法則』に沿い、温暖化すると動物の体が小さくなるとの指摘がある。私たちの子孫は体が小さくなるだろうと言う研究者もいます」