田中さんは管理人として、基本的に毎日ラブパーキングに顔を出し、料金の回収や敷地内の掃除、駐車スペースの増設作業などをしている。しかし常駐ではなく、夜間は管理人不在となる日も多い。ひとけのない山中で、セキュリティー上の心配はないのだろうか。
「駐車場を利用しないのに勝手に敷地内に入って来たら『不法侵入』だし、お客さんが入っている駐車スペースを覗いたり盗撮したりしたら『窃視の罪』で、どちらも懲役または罰金刑になります。私がここにいる時にそういう違法者を見つけたら警察に通報するし、私がいない時間帯でも、お客さんが警察に通報してほしい。そのことはちゃんと貼り紙に書いて、警鐘を鳴らしています。今のところ、そういったトラブルは起きていませんよ」
取材の途中、なんと若いカップルが乗った車が駐車場に入ってきた。車は右端の駐車スペースに停まり、運転席から出てきた男性が入り口部分に取り付けてある開閉式カーテンを閉めた。その様子をじっと見届けてから、田中さんが話を再開する。
「あのブルーシートの囲いも全部私の手作りです。今年の春頃からそういった準備を色々と始めて、8月1日にラブパーキングをオープンしました。駐車スペースは現在増設中で、あと6台分増やして、全部で10台入れるようにしたいと思っています。
ラブホテル代わりに使える駐車場というのは、日本ではここが初めてじゃないかな。事前に調べたところ、イタリアにはそういう駐車場があって、『囲いがあること』や『管理人がいること』などが条件として定められている。なので私もイタリアのシステムを参考にしました。
こちらで宣伝したわけではないのですが、ありがたいことに若い人たちがインターネットで盛り上げてくれて、県外からもお客さんが来てくれています。料金箱の近くに『らくがき帳』を置いているのですが、それを見る限り、実際に利用してくれた方々には楽しんでいただけているようです。
ただ、1回の利用料金が500円とか1000円ですから、売り上げは微々たるものですよ。まぁ、私はもう70歳近い年金生活者ですから、儲けようという気持ちはあまりなくて、ただ利用してくれる方々に喜んでもらえればいいと思っているんです」
ラブパーキングが満車になる日は来るか。
※週刊ポスト2022年9月9日号