ライブ配信の投げ銭機能を使った桂浜水族館のオンライン餌やり[ユーチューブより]新型コロナウイルスにより入場料収入が激減した各地の動物園や水族館では、餌代のためにクラウドファンディングや投げ銭などネットで遠隔地からの支援を募った(時事通信フォト)

ライブ配信の投げ銭機能を使った桂浜水族館のオンライン餌やり[ユーチューブより]新型コロナウイルスにより入場料収入が激減した各地の動物園や水族館では、餌代のためにクラウドファンディングや投げ銭などネットで遠隔地からの支援を募った(時事通信フォト)

 またクラファンが実現したにせよ、実際にどう使われたかが不透明なケースも多い。乞うた金品の使途に自身の生活の比重が大きいならば「こじき罪」にあたる可能性が高い。しかし拘留及び科料などの罰則も軽く、正直なところよほど悪質なケースを「見せしめ」で事件化する以外にはないのが現実で、その事例も先の高松駅周辺で不特定多数に金品を乞い続けた配信が「こじき罪である」という、従来型の乞食行為しか事件化していない。先の意見交換の中で社会部記者からはこのような意見もあった。

「現時点ではクラファンにしろ、投げ銭にしろ『有名人』なら何らかの理由をつけるだけで『公益性』を満たすとなってしまうと思うのですがどうでしょうね。見知らぬ人が日本一周をして「元気と勇気を届けたい」と言っても公益性は低いでしょうが、有名人ならその影響力から公益性が出る、という意見もあるでしょう。また炎上させる側の一般人が批判されますが、こうした行為に対してモラル的な反発というか、炎上させることでしか止められないという現実があるように思います。誹謗中傷はいけませんが、はっきりいって乞食行為としか思えない有名人のクラファンが存在するのは事実ですから」

 現状の法律で「有名人の誰がそれにあたる」という明確な判断はとうていできないが、いわゆる「こじき罪」にこれらの新しい資金集めの類いをあてはめるというのも難しくなってきている。確かに有名人なら「僕を食べさせる権利」をクラファンしても「替えのきかない唯一無二の人気タレントだから」で通ってしまいそうだ。

 また、あくまで筆者の考えだが、こうしたグレーなクラファン行為に対して非難の声を上げる人々を「嫉妬」だの「アンチ」で短絡的に片づけるのもどうかと思う。「やったもん勝ち」「金だけ、今だけ、自分だけ」に声を上げることは何も悪くない。むしろ法律が後手後手にまわっているだけで、その隙をついた「動いたもん勝ち」が許される現状のほうが不健全のように思う。有名人だから、囲みがいるからと「こじき行為」同然のクラファンを募るごく一部は本当に悪質(倫理として)であるにもかかわらず、これを批判する一般人、ネット民は「やっかんでるだけ」で悪いという風潮もどうかと思う。

 もっとも、最近ではクラファンもネット民からは精査されはじめ、2021年の人気インフルエンサーによるYou Tube進出クラファンなどは支援者8人で22,000円しか集まらなかったという厳しい実態もある。有名人だから、フォロワーが多いから簡単に金が集まるという流れも変わりつつある。多くのタレントや著名人が始めたおかげで競争が激しくなったのも原因か。

 それでも、無法地帯も同然に違法な「こじき罪」と紙一重の個人系クラファンが横行して久しいが、何でも法律で規制するのも問題であり、戦前は軽犯罪を理由に「予防拘禁」で思想家や作家を何年にもわたり投獄することが当たり前に繰り返された歴史がある。拡大解釈は避けなければならないが、まともな大多数のクラファンと一定の線を引く意味でも、時代に即した法の整備が求められているのは事実であり、現実だろう。

(敬称略)

【プロフィール】
日野百草(ひの・ひゃくそう)日本ペンクラブ会員、出版社勤務を経てフリーランス。社会問題、社会倫理のルポルタージュを手掛ける。

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