──『怒鳴り親』になる人の傾向とは。

土井:子どもへの親の接し方には、自然と親自身の生き方やものの見方が反映されます。虐待をする親が、じつは自身も親から虐待をされて育ったというケースは多く、一見同情の余地のない鬼のような言動の背後に、傷ついた体験や癒しきれない痛みを抱えていることが多々あります。また、周囲の期待に100%応えようとする生真面目なタイプ、自己肯定感が低いタイプ、ダメな自分が許せないタイプも、わずかな失敗や挫折で子どもに感情的に当たってしまう傾向があります。

土井高徳氏

「怒鳴る子育てにメリットなし」と語る土井高徳氏

──『怒鳴り親』にならないためには。

土井:まず、子どもが成長する過程で起こる様々な「発達」の特徴を正しく理解しておくことです。たとえば、思春期のわが子が荒れた態度をとっても、今は反抗するのが当たり前の時期なんだ、と冷静にとらえて必要なサポートをしてあげられたら、必要以上にわが子を怒る必要も親自身が怒鳴って後悔することもなくなります。

──それでも冷静になれない時は。

土井:愛と憎しみは隣り合わせ。家族に愛を求めるほど、そこには怒りも生じやすい。怒りの感情は持続性がありますが、その性質や仕組みが分かれば恐れる必要はありません。子どもにイラっと感じた瞬間の衝動を抑えるための6秒ルールや、思考のコントロールなど、子育て中に試せるアンガーコントロール術を覚えるところから始めてほしいと思います。焦らず、ゆっくり、長い目で続けることが大事です。自分自身の行動を制御できない人は、一度自身の育ちを振り返り、感情の整理を行うのもおすすめです。

──怒鳴らない方が子育てはうまくいく?

土井:はい。私は40年以上、『土井ホーム』というファミリーホームを運営し、大人に心を閉ざして社会的に養育困難といわれるたくさんの子どもたちと暮らしてきました。その長い経験から、怒鳴る子育てにメリットなしと確信しました。子どもにメッセージを送るには工夫も必要。たとえば、注意は静かな声で短く、とか、軽くしかってしっかりほめる、とか。そうした『土井ホーム』流の子どもとのコミュニケーションの方法も役立てていただけたらと願っています。

 親とはわが子が安心して迷惑をかけられる存在です。しかし、頭ではそうわかっていても怒りの衝動を抑えられない親は、あなただけではありません。お父さん、お母さん自身が本当に困ったときは、いろいろな人に助けを求めることを学んでほしいと思います。親自身が幼少期につらい体験をしている場合は、専門家にアドバイスを仰ぐことで心が軽くなり、親子関係が楽になる場合もあります。重い荷物を1人で背負い続けず、半分誰かに持ってもらったり、脇に置いたりしながら、子育てを楽しんでください。

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