2月にはJR琵琶湖線で「撮り鉄」によって生活道が占拠される事案が報じられた。珍しい乗務訓練を撮影しようとしたようで、この琵琶湖線は人気スポットが多く、6月にも線路内立ち入りで警察が出動する騒ぎが起きている。
1月には京浜急行品川駅のホーム端で試運転車両を撮影していた「撮り鉄」の集団が脚立だけでなく柵にまたがる、大人が大人を肩車するなどの行為が動画に収められ、これまたSNSで拡散のあげくに報じられた。
これらの中には列車の遅延や鉄道各社が緊急対応する事態となった事案もある。もちろんここで挙げずとも一般マナーレベルの話では罵倒、恫喝、集団による一般乗客に対する迷惑行為など、それこそキリがない。すぐSNSで拡散される。
「SNSに勝手に上げるな」「煽るメディアが悪い」「俺たちも客だ」と反発する「撮り鉄」もネット上にあるが、そもそも列挙した事例、これらすべてが往来危険罪、威力業務妨害罪、鉄道営業法違反などの「犯罪」および各鉄道会社の規定による迷惑行為である。個人の趣味で「犯罪」行為など常軌を逸しているし、大好きな鉄道に迷惑をかけてよいものだろうか。
SNSで撮れ高が相対化
これらの事案を、筆者の知人で長く鉄道撮影を手掛けるアマチュアカメラマンに伺った。
「昔もマナーの悪いのはいましたよ。『今どきの撮り鉄は』なんてベテランもいますけどそれは違う。ただ3点、民営、デジタルカメラ、インターネットという点が違うだけですね。これらすべてをひっくるめて『時代の流れ』と言ってもいいかもしれません」
界隈の専門用語や本旨でない解説部分は適時、平易に改めるが、ここで言う「民営」とは1987年に国鉄から分割民営化されたJR各社も含んだ話となる。デジタルカメラはフィルムカメラ(銀塩)からの移行、インターネットは先にも多く挙げた「SNSによる拡散」である。
「国鉄時代の職員は時代もあったのでしょうが、いい意味でおっかない国鉄マンが多かった。それこそ口頭注意じゃ済まないことだってありましたよ」
かつて日本国有鉄道法第34条には「役員及び職員は、法令により公務に従事する者とみなす」(公務員たる性質)とあった。国鉄職員は公社の職員で公務員ではなかったが、公労法(公共企業体労働関係法)が適用される立場で、それまでの官営時代の姿勢が色濃く残るものだった。JRにも部分的に引き継がれたが、お客様サービスを第一とする民営化以降のJR職員とでは良くも悪くも雲泥の差がある。