2001年の来日時、全米商工会議所会頭としてインタビューにこたえるスティーブ・バンアンデル(時事通信フォト)

2001年の来日時、全米商工会議所会頭としてインタビューにこたえるスティーブ・バンアンデル(時事通信フォト)

使えるものは何でも味方に取り込む米国流

 米国の経済界でアムウェイは確固たるポジションを持っていた。日本同様、米国にも全米商工会議所という組織がある。日本商工会議所は日本を代表する経済団体であり、会員数は全国で123万。11月に就任予定の新会頭は三菱商事の会長だった小林健氏(73才)であり、現在は日本製鉄名誉会長だった三村明夫氏(81才)だ。全米商工会議所は日本と違って民間団体ではあるが、全米約300万の企業や組織が加盟し、米国内だけでなく海外にも支所を持つ全米最大の経済団体である。その会頭に1979年、共同創業者であるジェイ・ヴァンアンデル氏(2004年に80才で死去)が就任。2001年には、45才だった息子でアムウェイ・コーポレーション会長だったスティーブ・ヴァンアンデル氏(67才)が就任したのだ。

 同じ年、スティーブ・ヴァンアンデル氏は自家用機で来日し、テレビ番組に出演、首相だった小泉純一郎氏とも面会している。だがロビイストによると「当初、ヴァンアンデル氏側は外交ルートから首相との面会要請をしたようだ。だが日本側から会頭という肩書きより、アムウェイの会長という点を重視され、難色を示された」。だが官邸にパイプを持つ記者を通して、ヴァンアンデル氏の立場を説明、急きょ面会が実現したという。その理由をロビイストは「ヴァンアンデル氏は会頭として来日し、ブッシュ大統領から小泉首相へのメッセージを携えていたようだ」と明かす。出演したテレビ番組では「ブッシュ大統領の右腕」と紹介、大統領の意向を受けて中国を訪問、江沢民国家主席(当時)と会談している様子が映し出された。それほど大統領だったジョージ・W・ブッシュ氏とヴァンアンデル氏は近い関係にあった。

 アムウェイの創業者らが政界、特に共和党と近しい関係にあるのは知られたところだ。多額の献金だけでなく、ヴァンアンデル親子はそれぞれ、大統領となったブッシュ親子をサポート。スポンサーとしても知られ、ブッシュファミリーはアムウェイが所有する自家用機で全米を飛び回ることもあったという。

 もう1人の共同創業者であるリッチ・デヴォス氏(2018年に92才で死去)も、共和党の組織を統括する全国委員会の財務委員長を務めており、息子の妻ベッツィ・デヴォス氏(64才)はトランプ政権で教育長官に就任している。政府に提言を行ういくつかのシンクタンクとのつながりも深く、米国政府の政策決定に大きな影響を与えているヘリテージ財団には出資者として名を連ねており、ジェイ・ヴァンアンデル氏が財団の管財人などの要職を務めたことがあるのだ。

 日本以外にも様々な国でトラブルが絶えないマルチ商法を擁護する気は全くないが、アムウェイの成功が物語るように、ダイレクト・セリングは儲かるビジネスなのだろう。これまでに何人もの大統領がダイレクト・セリング協会に対し、米国経済などに貢献していると感謝のメッセージを寄せているぐらいだから、政界への貢献も多大だと推測される。

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