おむつは恥ずかしくない
記憶力が落ちると、その低下を止めようと「脳トレ」に励む人がいます。しかし、これは工夫のない受験勉強と同じです。
いつまでも元気でいるためには、思考や判断、行動を司る脳の「前頭葉」を鍛える必要があります。そのためには人とのコミュニケーションが重要で、脳トレを1人で解いても「前頭葉」は活性化しません。脳トレ仲間を作って一緒にワイワイやるなら別ですが、そうでなければ、同じ時間をかけて誰かと議論するほうが、前頭葉の活性化にはずっといいはずです。
若い頃は当たり前にできていた排尿の機能も落ちてきます。頻尿になったり、間に合わずに漏れたりしてしまうこともある。そんな時に、「おむつ」を恥じる必要はありません。それを着けることで活動範囲が広がるなら、堂々とおむつを使いましょう。そのほうが、「いつまでも元気で生きる」という目標達成のためには「楽」だからです。
そもそも、「長生き」が正しいと言っているのではありません。残された人生をいかに楽しく、元気に生きるか──それが目標です。
健康診断やかかりつけ医の診断では、血圧や血糖値の数値を下げるために、食べ物などの生活習慣の「指導」を受けることがあるかもしれません。
食べたいもの、飲みたいものを我慢するよう言われるかもしれませんが、歳を取ってからの我慢は、栄養不足で寿命を縮め、かえって老化を進めるデメリットが大きい。
塩分や糖分を我慢すると、高齢者ほど低ナトリウム血症や低血糖のリスクが高く、意識障害を引き起こす可能性があります。肉に含まれるコレステロールは男性ホルモンの素で元気の源なので、肉を食べるのを我慢する必要はありません。コレステロール値を下げると、がんのリスクが高まるという研究もあるほどです。
血圧や血糖値、コレステロールなどの数値は、高齢者になったら少し高めのほうが元気でいられる。何かを我慢してそれらの数値を下げるより、少し高めの数値でいることのほうが楽なんです。
東大医学部に入るために「楽」を工夫した私が言えることは、「健康のために楽をしなさい」ということなのです。
※週刊ポスト2022年11月4日号