2009年、パイオニアが生産を打ち切ったレーザーディスク(LD)プレーヤー「DVL-919」。[同社提供](時事通信フォト)

2009年、パイオニアが生産を打ち切ったレーザーディスク(LD)プレーヤー「DVL-919」。[同社提供](時事通信フォト)

 すべてダウンロードで済む時代、ゲーム機、例えばPS5の『PS5 Digital Edition』はダウンロード専用機だ。すべてのモデルで光学ドライブの廃止は時間の問題だろう。ノートパソコンに至っては17インチ以上のクラスでも内蔵していないモデルが大半となった。

「専業でないうちでもDVDやCDの扱いは減るいっぽうですから、大手の専業ともなるともっと厳しいのではないでしょうか」

 大手とはツタヤ、ゲオなどのCD・DVDのセル・レンタルショップのことだが、すでに円盤のレンタルは一部撤退や縮小、店舗の統廃合に追い込まれている。また多くは古着や中古家電などのリサイクルショップに既存店舗を転換し続けている。そちらのほうは好調だ。高額な円盤を購入する層ですら減っているのだから、借りて観る程度のライトな層が動画配信サービスに流れるのは必然だろう。

「厳しいことを言いましたが、いまならまだ円盤も物によっては値段がつきます。思い入れのある作品ならともかく、そうでないなら早めに売ったほうがいい。思うような買い取り額でなくとも値段がつくだけましです。レーザーディスクのようになったら悲惨ですよ」

 彼と筆者は古い仲で、元はと言えば1990年代、レーザーディスクのコレクションが縁だった。ちなみにレーザーディスク(LD)とは電機メーカーのパイオニアが普及機として実用化、事業化した商品で、直径30cmの大きな光学ディスクが特徴である。かつては映像鑑賞を趣味とする者、とくにアニメファンにとっての必需品だった。何万円、ときに何十万円もするレーザーディスクボックス(アニメ作品などを全話収録したボックス)は中古市場で高額取引され、投機とまでは言わないが一大市場を築いていた。

「でもDVDの普及で一気に駆逐されました。再生機そのものが商品として消え、高価なボックスも二束三文になりました。何万円もしたボックスがネットオークションですら数千円とかですからね。マニア目当てに高額つけてる業者もありますけど、その値付けで売れてる感じはないですね」

CDやDVDは最初から劣化メディアだった

 作品にもよるが、レーザーディスクは現代の市場において「化石」と言っていいだろう。筆者の自宅にも購入価格で言ったら当時で総額100万円以上のレーザーディスクボックスや全話コンプリートの作品群が埃をかぶった百科事典のように並んでいる。どれも彼の言葉どおり二束三文、再生するLDプレーヤーはなんとか維持しているが、正直なところ再生確認に回す程度である。作品のほとんどはサブスクで大量に上がっているし、カルトで貴重な作品すら、一部は著作権侵害にも関わらず動画共有サイトに転がっている時代である。もちろんレーザーディスクソフトの買い取りはほぼ不可、買い取るマニア店舗でも「対象は一部のものに限定」である。重いし大きいし市場価値もない、もはやノスタルジーでしかない。DVDもCDも、円盤のすべてはこのレーザーディスクの運命をたどるということか。

「これは私の勝手な意見なんですけど、レコードほどの思い入れというか、文化的な意味は薄いと思うんですよね。光学系ってだいたいそうだと思うんですけど、マニアの戯言かもしれませんが、別にCDやDVDに音質や映像のアドバンテージってなかったし、むしろ最初から劣化メディアだったわけで。唯一の利点が当時の基準でレコードやビデオに比べてノイズが少なくて手軽だったというだけでしょう。ただノイズが少なくて手軽というだけなら、そりゃより手軽なネットに流れますよ」

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