鉄道開業150年を迎えるにあたり汽笛が復活したD51(撮影:小川裕夫)

鉄道開業150年を迎えるにあたり汽笛が復活したD51(撮影:小川裕夫)

 1974年、大阪・京都方面と敦賀を結ぶ湖西線が開通。湖西線は米原駅・長浜駅といった琵琶湖東岸を経由する北陸本線と比べて、敦賀までの距離が短い。また、大半が直流電化区間として整備されていた。そうしたことから、大阪・京都方面からの貨物列車は湖西線経由へと切り替えられていく。こうしてED70は活躍の場が少なくしていった。翌1975年にED70は引退した。

 その後、長浜駅が所属する北陸本線も1991年から直流電化へと切り替えが始まり、2006年には敦賀駅までの区間が直流電化に転換された。

 長浜駅は東海道本線の切り替え、そして電化方式の切り替えと二度のターニングポイントを経験したわけだが、それらを乗り越えて鉄道開業150年を迎えた。

「鉄道150年という節目にあたり、当館でも何かできないかと考えました。考えた末、静態保存しているD51の汽笛を鳴らせるようしたいと思ったのです。2022年1月頃から、各所と実現に向けての話し合いを進めました。今年6月に汽笛の音が出せるようになったのです」(同)

 長浜鉄道スクエアのSLはあくまでも展示物だから、石炭を投入して蒸気で走らせる必要はない。そのため、コンプレッサーや配管を整備して空気圧縮という手法で汽笛を鳴らしている。汽笛を鳴らすための修理費用は約100万円。それほど大きな金額ではなく、手間もかからなかった。しかし、

「汽笛が鳴るようになった当初は毎日1回、正午の12時に汽笛を鳴らしていました。ところが、近隣から『汽笛の音がうるさい』というお叱りを受け、8月末から定期的に鳴らすことを止めています。近隣住民の理解を得られたことから、現在はイベント時のみ10時・12時・14時の1日3回鳴らしています」(同)

 鉄道の町・長浜は、他都市に比べて鉄道に理解がある。だからと言って、SLの汽笛を全市民が受け入れるわけではない。現代は駅周辺に多くの人が暮らし、汽笛を騒音と受け止める人がいることは事実だろう。

 その騒音で生活を脅かされる人がいるなら、鉄道側は一定の配慮を迫られる。毎日12時に鳴らされていた汽笛が消えてしまったことは時代の流れでもあり、それは仕方がないのかもしれない。ただ、せっかく復活した汽笛が鳴らせなくなることは不運と言えば不運で、鉄道関係者や汽笛の復活に奔走した人たちにとっては忸怩たる思いがあったことは想像に難くない。

 開業150年で盛り上がる鉄道業界だが、その道のりは決して平坦ではない。輝かしい話ばかりではなく、時に不運もあった。そんな苦難を乗り越えてきた先人たちの苦労と歴史、時に不運も経験したことだろう。そうした負の面も同じように語り継がれてほしい。

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