「脳の現象でいうと、瞬間的に脳細胞が活性化して気分が高揚し、時間が経てば失われる反応が『幸せ』です。それが消えたら、また満ち足りなくなります。
現代の私たちが目指したいのは、ささやかなことに幸せや満足を見出し、ポジティブな気持ちが持続する『ウェルビーイング』という状態です。
この場合、強いシグナルでしか幸せを感じられない人は、ささやかなことに幸せを感じられる人よりも“アンハッピー”といえます。ささやかな幸せには注意が向きづらい分、意識して能動的に見つけることが大切です。
ささやかとは『夕日がきれい』『おいしいものを食べた』など日常のことでいいのです。“ネガティブ好き”な脳の仕組みに抗ってポジティブな感情を脳に記憶させられれば、ささやかなシグナルに気づきやすくなり、前向きな思考が生まれ、脳も成長します。ストレスは、悪く捉えれば『ダークストレス』になりますが、『失敗にも学びがある』といい面を捉えれば、自分を成長させる『ブライト(明るい)ストレス』にもなります」
“ささやかな気づき”を取り戻す方法はあるのだろうか?
「私が実践しているのは、カレンダーを、ポジティブなことで埋めていく方法です。たとえば毎週月曜に、その週の空いている時間をワクワクできる予定で埋めていくのです。私の場合、一日をご機嫌に過ごしたいので、朝のルーティンを組み込んでいます。
具体的には、好きなお菓子を買う、推しグッズを作るなど、楽しく続けられることをたくさん入れていきましょう。慣れてくると、『今週も楽しみだ』と、前向きな気持ちが優勢になりますよ」
【プロフィール】
応用神経科学者・青砥瑞人さん/高校中退後、米国UCLA神経科学学部を飛び級で卒業。神経科学を心理学や教育学に結びつけ、新しい学び方や生き方を提案するDAncing Einsteinを創設。著書に『ハッピーストレス ストレスがあなたの脳を進化させる』(SBクリエイティブ)などがある。
取材・文/佐藤有栄 イラスト/オオノマサフミ
※女性セブン2022年12月8日号