鉄道開業150年の2022年、記念イベントや出版はあるものの、コロナ禍で鉄道会社は軒並み収益減になり、祝賀ムードはあまり感じられない。
「これまで先送りしてきた問題が、コロナで目の前に突き付けられていますね。10年後には採算が取れなくなるんじゃないか、と言っていたローカル線の経営が、すでに厳しくなっていますし。
不採算路線については、採算が取れないなら廃止しようという意見もあります。それは簡単だけど安易な解決方法なんです。鉄道が廃止されると公共交通はバスになりますが、バスになったとたん乗客が半分になって、採算が取れなくて撤退、なんてことも起きます。
鉄道にはシンボル的な意味もあります。駅には人が集まるし、鉄道には安心感もある。地域の交通事情がよくなれば、家に閉じこもっていた高齢者も町に出るようになり、医療費が減るかもしれません。メディアは鉄道の赤字や廃線のときしか報じませんが、遠距離と近距離の交通がどうあるべきなのか、全体像を考えていかないといけないと思うんです」
【プロフィール】
今尾恵介(いまお・けいすけ)/1959年横浜市生まれ。明治大学文学部ドイツ文学専攻中退。現在、日本地図センター客員研究員、地図情報センター評議員を務める。『地図マニア 空想の旅』で斎藤茂太賞、『今尾恵介責任編集 地図と鉄道』で交通図書賞を受賞。ほかに『地図と鉄道省文書で読む私鉄の歩み』『地図帳の深読み』『地図帳の深読み 100年の変遷』など著書多数。2019年度に日本地理学会賞(社会貢献部門)を受賞した。
取材・構成/佐久間文子
※女性セブン2023年1月1日号