2003年頃から米国でもトコジラミの被害が増加している。写真は2014年7月、ダークセン上院オフィスビル内の6階女子トイレが、トコジラミが発生したため封鎖された(AFP=時事)

2003年頃から米国でもトコジラミの被害が増加している。写真は2014年7月、ダークセン上院オフィスビル内の6階女子トイレが、トコジラミが発生したため封鎖された(AFP=時事)

「薬剤の使い方を間違うと広がります。誰かが持ち込んだトコジラミがその部屋だけでなく他の部屋にも逃げ出して、毎日卵を産み続け、建物全体がトコジラミまみれになります」

 さらに、海外から持ち込まれるトコジラミは近年、市販の殺虫剤が効かない「スーパートコジラミ」が紛れこみ日本で増殖しているとされる。とくに2019年までのインバウンドによるトコジラミの大量侵入は、それまで国内にはほぼいなくなったとされるトコジラミの復活とパワーアップを後押ししてしまった。

「ホテルとかネットカフェ、あと劇場とかサウナですね。刺された珍しい例としては電車のシートや古本もあります」

 業者も商売、高額の駆除になるため請け負いたいのかと聞くと苦笑いで首を振る。

「本当に難しい虫なんです。ちょっとの手違いで広がったり、最悪な場合は私達の服や道具についたりもします。防護服は着ますが絶対ではない。駆除したのにまた出た、と言われることもあります。コンセントの中にびっしりとか、普通では考えられない場所に密集します。狭くて暗いところならどこでも侵入しますし、人を刺しては卵を産みまくります。足も速い」

 JPCAの茂手木氏もまた、こう指摘する。

「トコジラミの厄介なところは、いったん複数の部屋に広がってしまうと駆除に時間がかかるところです。そのぶんコストもかかります。繁殖して広がってしまうと、一回の作業では終わらないのです。薬剤などで駆除作業をしたあと、何週間かあとに確認が必要で、それでも駆除しきれないことがあります。卵がとても小さくて、その駆除が難しいためです。疑わしいと思ったら、早めにチェックして発見して、一部屋だけで済んでいるうち、早めに対策をとると駆除もしやすいです。早期発見と早期対策がトコジラミにはいちばんです。どんな高級住宅でも発生する可能性がありますので、早めに気づけることが大事です」

 先に触れたように海外からの持ち込みは各保健所も指摘しているが、日本人旅行客が帰国時に持ち帰ることもある。そして他の施設や家庭に持ち込まれる。駆除業者もこう語る。

「トコジラミは何でもつきますよ。布団や毛布はもちろん、カバンとか靴下とか。本やおもちゃ、ノートパソコンとかオーディオ、ゲーム機本体の中に付く場合もあります。暖かくて暗い場所が好きですからね。ほっといたら数百匹、数千匹のトコジラミにあっという間に占拠されて、全身を刺されるでしょうね」(駆除業者)

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