道頓堀川に架かる戎橋と、グリコなどの巨大な看板。戎橋の下に若者たちが自然発生的に集まるようになり、グリコサインの下、略して「グリ下」と呼ばれるようになった(時事通信フォト)

道頓堀川に架かる戎橋と、グリコなどの巨大な看板。戎橋の下に若者たちが自然発生的に集まるようになり、グリコサインの下、略して「グリ下」と呼ばれるようになった(時事通信フォト)

 公園近くで長年飲食店を営む菅谷万里子さん(仮名・60代)が声を潜める。

「このあたりには昔から女の子が立っていたけど、何度も摘発があったりして、日本人の若い子は一時期ほとんどいなかったんです。中国とか韓国、東南アジア系の外国人はいましたけどね。コロナ禍になってから、日本人が増えたし、見物客も増えました」(菅谷さん)

 当の公園付近はかねてから知る人ぞ知る有名な場所だったが、いま、そこに立っている女性は、どんな人たちなのか。現在も月に一度は公園近くに「立つ」というアリサさん(仮名・20代)が、匿名を条件に筆者の取材に答えた。

「ここに立つのは、ほとんどが現役の風俗店店員か、働いた経験がある人だと思います。要は、お店の客がいない、いても指名されないという女の子たちが最終的にここへ来る。男の人たちも、ここに立つ女の子がどういう属性かわかっているから、交渉もさっと済ませてホテルなどに移動する感じです」(アリサさん)

 アリサさん自身も、勤務する店が暇なとき、もしくは出勤したくない気分の時に公園に立つ。夜20時ころから深夜まで立っていると、30分ほどで2~3人の男が「売りの子?」とか「割り切り系?」と声をかけてきて、一時間およそ1万円から2万円を受け取る。客がゼロの日は少ないが、大体1~2人の客を取るのだという。またその際に、入浴や食事を行い、携帯電話の充電、睡眠もとるのだと話す。

「立つなんて恥ずかしいじゃん、怖いじゃんって言われますが、対面だから全然楽だし、今はマスクしているから余り気になりません。やばそうな見た目の人は無視できるし、一応、路上で他の人の目もあるから、いきなり殴られたりする心配もないです。一時期、ネットでお客さんを集めようとしたんですが、顔も見えないし、何をされるかわからず本当に怖い。ネットも嫌だしお店でも稼げない、だからここって感じですね」(アリサさん)

一部の過激化する街歩き動画配信者

 もちろん、アリサさんをはじめ、公園周りに立っている女性たちの行為は法律に触れる可能性もあるが、危険を承知で働かねばならない状態の女性がまとまって立っているという状況は、社会的に看過されていいはずがない。集まる女性たちにとって公園がセーフティネットのような場所になっている実態もあるので、治安のためにないほうがよいとか、夜に人が集まらないようにするべきだという主張は、あまりに乱暴だと言わざるを得ない。そんなデリケートな機能を果たしている場所だというのに、カメラを持った興味本位の連中が押し寄せ、冒頭で説明したように、女性の人権を蹂躙するような立ち振る舞いをしているのだ。

「新聞記者やテレビカメラが取材に来るだけじゃなくて、一般人から隠し撮りまでされるようになり、また公園の周りから人が減りました。私たちがいなくなったから平和じゃん、ってことではなく、みんなネット使ったりほかの場所に立ったりしてるはずです。私たちの存在が煙たがられてるのは分かりますが、どんどんこうして居場所がなくなっていく」(アリサさん)

 コロナ禍以降、若者たちが集まる場所として、新宿歌舞伎町の「トー横(東宝横)」や大阪ミナミの「グリ下(グリコ看板下)」、さらに名古屋の「ドン横(ドン・キホーテ横)」が注目された。こうした場所にいる若者を取材したときも、彼らは同様に「居場所がなくなる」と嘆いた。警察や行政が彼らを排除したことでトー横キッズたちは散り散りになり、より社会の目が届きにくい場所に追いやられていった。

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