花粉はウイルスや菌と比べるとかなり大きいため、肥満細胞は大量にヒスタミンを出します。そのヒスタミンが目や鼻などの神経や血管を刺激し、かゆみや鼻水など不快な症状を引き起こすのです」(長澤さん・以下同)
そのヒスタミンを抑えるのが花粉症薬の主力である抗ヒスタミン薬。A子さんがのんでいた薬だ。
「抗ヒスタミン薬に含まれる『d-クロルフェニラミンマレイン酸塩』は神経の活性に影響を与えることがあり、副作用としてまれに精神錯乱を引き起こすとの報告がある。服用後、急に乱暴になった場合は抗ヒスタミン薬の副作用である可能性が考えられます」
第一世代(※1983年以前に発売された薬で、それ以降に発売された第二世代より効き目が強く、副作用も強い)の抗ヒスタミン薬はヒスタミンの分泌そのものを抑制するため、よく効くと感じる人が多い。だが、脳への影響が大きく、強い眠気が出たり、さらには認知機能を低下させるといった副作用もある。
「脳の視床下部や脳下垂体という覚醒や睡眠を司る部位の伝達物質をヒスタミンが担っている関係で、ヒスタミンが減ると眠くなるのです。また、ヒスタミンは細胞間伝達物質であり、それが作られないよう薬でブロックすれば、当然ながら認知機能は落ちる。長期にわたってのみ続けると、認知症になるリスクがあります。これら第一世代の抗ヒスタミン薬は市販の花粉症薬のほか、総合感冒薬にも配合されています」
花粉症薬で夫が意外な副作用に襲われたというのは、神奈川県在住のB子さん(53才)だ。
「2才年上の夫は、特に持病もなく健康そのもの。ただ唯一、春先に起こす花粉症がひどいくらいでした。その夫が救急車を呼ぶ騒ぎを起こしました。なんと、おしっこが出なくなって苦しいというのです。脂汗をかいて苦しむ夫を前に、かなり動揺してしまいました」
長澤さんが説明する。
「これは尿閉という症状で、前立腺肥大症のある男性が抗ヒスタミン薬をのむと尿の通り道をふさいで排尿がしにくくなることがあります。抗ヒスタミン薬の持つ抗コリン作用が原因で、口の渇きや便秘を引き起こす場合がある。そのほか、眼圧の上昇を起こすこともあり、閉塞隅角緑内障の人は視覚に影響し、最悪の場合は失明することもあるので注意が必要です」
※女性セブン2023年2月16日号