2013年、レジェンドホークスセレモニーで花束を贈呈された元南海の野村克也氏(左)と門田博光氏(時事通信フォト)

2013年、レジェンドホークスセレモニーで花束を贈呈された元南海の野村克也氏(左)と門田博光氏(時事通信フォト)

引退直後、ダイエー・中内オーナーからハガキ

 門田は、野村から江夏豊、江本孟紀とともに『三悪人』と呼ばれて対立しているようにも見えたが、生前は、打撃を学んだ師でもあると話していた。

「門田さんは『ヒットの延長がホームラン』という野村さんの考え方に反発したり、『ホームラン狙いのバッティングを辞めろ』と何度も諭されたりするなど、良好な関係には見えなかったかもしれない。しかし、野村さんのフォームを真似るなど、自分に参考になる部分は積極的に取り入れていた。野村さんに影響を強く受けた選手の1人である門田さんは、自分なりの哲学を持って、567本もホームランを打った。つまり、『野村+門田』の理論があるわけで、“鬼に金棒”のような指導者になる可能性もあったと思います」

 松永多佳倫著の『確執と信念 スジを通した男たち』(扶桑社)で、門田は引退後、2度指導者としてオファーがあったと述べている。1度目は引退する1992年、ダイエーの中内功オーナーからハガキをもらったという。この時は自ら話し合いの場にはつかなかったと記述されている。

「門田さんが引退した年のオフに、根本陸夫さんが代表取締役専務兼任で監督に就任した。2年間指揮を執った後は現在のゼネラルマネージャーのような仕事に専念して、ドラフトやトレードなどで徹底的に良い選手を補強してチームを作り上げた。1994年オフには、現役時代から巨人一筋だった王貞治監督を招聘した。王さんをダイエーに呼んだ時点で、長期政権になることは目に見えており、門田さんが古巣で監督になる可能性はかなり薄くなったと思います。

 門田さんが、引退直後の1993年に持病の糖尿病を悪化させ、手術を要するほど右足が不自由になったことも大きかった。それでも解説の仕事で球場に足を運んでいたし、まだ40代でしたから、そのうちどこかの球団でユニフォームを着るチャンスはあると思われていました」

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