村山さんがとりわけ立派だった
晩年は、官僚の不祥事が相次いだ事に心を痛めながら、政治主導の名のもとに官僚の士気が低下することを危惧していた。「幹部人事を内閣が決めると言うが、官僚の人事評価は難しい。公平公正な人事をやらないと官僚が能力を発揮することはできない。政治家にそれができるでしょうか」と。
石原さんに最後に会ったのは、2021年8月5日だった。初対面の時と変わらず、柔和な表情で迎えてくれた石原さんは、政府のコロナ対策のこと、メディアの問題など歯切れよく問題点を指摘した。「官僚を使いこなしていない」「能力を発揮させていないのでは」と心配していた。霞が関のご意見番は健在だった。
最後に、7人の首相の評価について聞くと、意外にも「村山さんがとりわけ立派だった。人柄も良く私は尊敬している」と語った。同じ戦中派、立場は違っても政治に対する思いが共通していたのだろうか。そして、今の政治の話になった。
「危機の時の政治は難しい。与野党が政治休戦をするのがかつての知恵だったが、今それができないのは、どうしてだろうか」
35年間、私にとっても「ご意見番」だった石原さんのそれが最後の言葉になった。
文/城本勝(政治ジャーリスト)
※週刊ポスト2023年2月24日号