大豆でもアレルギー
なぜ、スギ花粉症の人がトマトを食べるとアレルギー反応が出るのか。それは花粉症のメカニズムと深い関係がある。
人は、花粉などアレルギーの原因となる物質(アレルゲン)が体内に入ると、それを“異物”として認識し、排除するため体内に「IgE抗体」を作る。その後、花粉とIgE抗体がくっつくとヒスタミンやロイコトリエンなどの炎症化学物質が放出され、その刺激によって、くしゃみや鼻水などのアレルギー反応が引き起こされる。
「発症後、花粉に含まれるアレルゲンと似た構造のたんぱく質を含む食べ物を摂取すると、IgE抗体がそれも“異物”として認識する『交差反応』が起きて、アレルギー症状が出る場合があります。それがPFASの仕組みであり、事例はさほど多くありませんが、スギ花粉症患者の場合はトマトによる交差反応が確認されています」(許氏)
日本における春の花粉症はスギ花粉のほか、カバノキ科のハンノキ、シラカンバなどがあるが、花粉の種類によって、危険な「食べ合わせ」は異なるという。
「例えば、ハンノキやシラカンバの花粉症はリンゴ、モモ、大豆などでアレルギー反応が出ることがあり、スギ花粉症に比べてPFASを合併しやすい。
夏に飛散することが多いカモガヤ、オオアワガエリの花粉症の人はメロン、スイカ、キウイなどに注意が必要です」(同前)
公益財団法人日本医療機能評価機構が出している「食物アレルギー診療ガイドライン」(2016年)によると、シラカンバやオオバヤシャブシの花粉症患者の20~40%に、モモやリンゴなどバラ科の食べ物による合併症が見られたという。
PFASを引き起こす「花粉の種類と食べ物」の主な組み合わせは、別表にまとめたので確認してほしい。
また、こうした食べ物によるアレルギー反応は「花粉症との組み合わせ以外にもみられることを知っておきたい」と久住氏は語る。
「クラゲの毒に対する抗体は納豆にも反応するので、よく海水浴をする人は納豆アレルギーを持っていることがある。そのほか、ゴム手袋の素材のラテックスでかぶれる人は、バナナやアボカドでアレルギー反応を起こすことがあるなど、思いもよらぬ組み合わせはたくさんあります」
※週刊ポスト2023年3月3日号